後輩女「そ、そんな式なんて……付き合ってもいないのに式なんて……」
先輩女「結婚を前提としたお付き合いなら、遅かれ早かれやるものなんだから。今決めちゃお?」
男「ミーティングは終わりですか?」
先輩女「このタイミングでそれ? うん、終わりだから結婚の話をしようよ」
男「では私は先に失礼します」ガタッ
後輩女(男先輩……?)
先輩女「駄目だよ、帰さない。今までことごとく『遠慮します』で傷付いてるんだから。『遠慮します』は無しで返事してよ」
男「………………」
後輩女(何だろう……雰囲気が……)
先輩女「返事、して。あたし真剣だよ? 男くんのこと好きなんだから。今すぐ結婚したいくらい好き」
後輩女(男先輩の……雰囲気がいつもと違う……?)
先輩女「お願い……はっきりした返事が欲しいの……」
男「わかりました。はっきり言います。お断りです。女先輩と私の関係は会社の先輩と後輩です。昔から、今後も、その関係だけです」
先輩女「……うん、そっか。恋愛対象外……ってことか」
後輩女(女先輩……)
先輩女「あはは……はっきり言ってって言ったけど、男くん容赦無いなぁ……結構ショックかも……」
男「では、私は行って良いですね。失礼します」
先輩女「あ、あ、ちょっと待ってよ……あたしが先に出るから。二人とも時間差で出てよね?」タタタ
男「わかりました。お疲れ様です」
後輩女「………………」
先輩女「男くん……クールだね。すん、ざ、残酷なくらい……」バタン
男「………………」
後輩女「……男先輩」
男「うん?」
後輩女「女先輩、泣いてましたよ……?」
男「そうだね」
後輩女「次に会った時……謝っちゃいけないような気がします」
男「俺もそう思う。このことは見なかったことにしておいて」
後輩女「はい……」
男「もう少し時間を潰そうか」
後輩女「男先輩、訊いて良いですか……?」
男「どうぞ」
後輩女「女先輩を……その、振ったのは……女先輩が、同じ会社の人だからですか?」
男「………………」
後輩女「………………」
男「それもある、とだけ答える。それ以上は答えたくない」
後輩女「そう……ですか」
男「くだらない理由だよ。自分でも辟易するくらい。ゴミより価値の無いものだ」
後輩女「………………」
男「もう戻ろう。デスクに戻ったら今日は上がりなさい。明日は運転するんだろう? きちんと休んで体調を整えなさい」
後輩女「はい……了解です」