猫「あの時の少年の悲しそうな顔……今でも忘れられぬ」
猫「吾輩は一瞬拾ってもらっただけでも嬉しく、再び捨てられたことなど微塵も気にしていなかった」
猫「だが、当時の吾輩にそれを伝える術はなかった」
猫「だから、あの少年は今でもあの出来事を悔いているのかと思うと――」
猫「吾輩の心はびしょ濡れになってしまうのだ……」
男「猫さんにこんな過去が……」
女「だからいつも、体を水で濡らしていたのね……自分を罰するために……」
弁護士「……」
弁護士「……私なんだ」
猫「え?」
弁護士「その時の少年は……私なんだッ!」
猫「おお……! そういえば面影がある……!」
弁護士「君こそ……すっかり貫禄がついていて、話を聞くまで全然気づかなかった……!」
猫「ようやく……会えた……」
弁護士「ごめんよ……あの時は捨ててしまって……」
弁護士「私がバカだったから……ぬか喜びさせて……」
猫「なんの……これっぽっちも気にしてないさ……」
弁護士「大きくなったね……」
猫「ニャ~ン……」
ギュッ…
猫(やっと……吾輩の心が……乾いた……)
――
弁護士「本当にいいのかね?」
猫「ああ……今さら飼い猫になるというのも照れ臭いしな」
猫「吾輩はこれからも野良として生きていくよ」
猫「それに……今はこのバカップルの親分みたいなものになってるしな。こいつらを放ってはおけん」
男「てへへ……」
女「えへへ……」
弁護士「そうか……ならば君を飼うのは諦めよう」
猫「しかし、いずれ貴公の事務所にも立ち寄らせてもらおう」
弁護士「おいしいキャットフードを用意して待っているよ!」
猫「楽しみにしておこう」
弁護士「ああ、あと……これは社長からの慰謝料だ」サッ
猫「和解したのになんで慰謝料?」
弁護士「まあ……そういう人なのだ。受け取ってあげてくれ」
男「さ、行きましょうか、猫さん」
猫「うむ」ニャン
女「ところで、もらった慰謝料はどうするんです?」
猫「ふむ……吾輩が金をもらったところで猫に小判だからな……」
猫「捨てられた動物たちを保護する団体などに、寄付するとするか」
男女「さっすが猫さん!」
猫「吾輩は……猫である!!!」
おわり
「猫レンジ事件」「猫電子レンジ訴訟」などと呼ばれる事件。
とあるおばあさんが電子レンジをプレゼントされ、その機能を大層気に入り活用していた。ある日、飼い猫がずぶ濡れになって帰ってきたため、おばあさんは電子レンジを使って猫を乾かそうと考えた。猫を電子レンジにいれ温めをスタートしたところ、爆発を起こし、猫は亡くなってしまった。そこで、おばあさんは電子レンジの取扱説明書を確認したが、「動物をいれてはいけない」という明記はなかったため、電子レンジの販売元を相手に訴訟を起こした。その結果、おばあさんの主張は認められ、多額の賠償金を手に入れることとなり、電子レンジの説明書には「動物をいれないでください」という注意書きが明記されるようになった。
出典:http://ssplus.blog.jp/archives/14677403.html