【※中学生のび太※】ドラえもん「道具を使って本気で戦いたいだって?」 アニメでは決して放送できない幻の秘話がココに・・・

―――――それから一週間が過ぎた…

朝日が街に差し込むより少し前…

二つの人影が街道を歩く…

男「本当に…覚悟はできてるんだろうな…」

街頭にぼんやり照らされた訝しげな表情が
もう一人を見据えて言った…

女「あたり前だろ?チャンスがあるとすれば今日さ…」

女が頷く様に答える
その右手には 透明な刃物が握られていた

女「今日…あたし達は自由になるんだ…!」


――7月30日、朝――――――…

ー留置所ー

警部「あの子は…あれからどうかね」

担当刑事「体調は大分回復した様ですけど…」

警部「依然、口は開かず…か」

担当刑事「ええ…」

警部「ふむ、困ったな…」

のび太は警察に身柄を拘束され
留置所で取調べを受けていた…

逃げようと思えば『通り抜けフープ』等で逃げる事も出来た
しかし、スネ夫やジャイアンに被害が及んでしまう事を思えば
留置所の方がいくらか安全と考え、踏み止まる

ここにいればドラえもんも襲ってはこない……

のび太〈もう……全部…疲れた………〉

いつもの様に、とある一室に呼び出され取調べが始まる…

我が子の仇を討たんとばかりに必死に訴えかける警部
それでも、のび太は頑なに口を閉ざす…

無関係の者を巻き込みたくない
何よりのび太自身、この戦いを続けられる精神状態ではなかった…

いつも通りの空虚な時間が過ぎ
雑居房に戻るのび太

のび太〈おなかすいたな……ご飯にしよう………〉

留置所での食事は少しの自由が許されており
自費で出前を取ることも出来る

のび太は『グルメテーブルかけ』で注文し
自分で食事を用意していた…

標高7000メートル以上ともあろう高山から削り取った氷で冷やしたグラスに
遥か山脈の地中深くから汲み上げた良質な天然水を注ぎ、食事中はそれで水分を摂る

前菜はイタリア料理
生ハムやサーモン等を特製ソースで和えたサラダで始まり
パスタ、リゾットとその日の気分で一皿目を注文

フランスの最高峰グラニデ〈冷菓〉で口直しの後
メインディッシュのヴィヤンドに移る
こちらもフランス料理であり
皿に飾り付けられた華やか彩りは殺風景の留置所にどこか気品を持たせる……

それらを一通り食したのち
三ツ星レストラン専属のパティシエまでもが舌鼓を打つという最高級ケーキを一切れ…

食後のティータイムを楽しみ
『グルメテーブルかけ』の前で両手を合わせ深々とお辞儀をすることで
のび太の一食は終わる……

男「軽い気持ちでつまんでみたら……何と豊穣極まりない味!」

のび太「……」

隣でつまみ食いをしながらのび太を茶化すボサボサ髪の男…
同じ雑居房に住む同居人である

男「あんたも強情だね…毎度取調べを受けても相変わらず黙り込んでるらしいじゃないか…」

男「無関係ならありのまま吐いちまえばこんな豚箱から抜け出せるのに…」

男「この無愛想&物好き野郎めっ、このっこのっ…」グイグイ

のび太「………」

男「あーーー……退屈だ………」

男「……あんたはどんなヤマに首つっこんだんだ?」

のび太「…………」

男「俺はさ……クラッキングってやつさ………」

男「半月前……行政機関のサーバーにアクセスして……ある男の個人情報を抜き取った……」

男「……そいつは俺達の…大切な人の命を奪ったのさ………!」

――――――突如、見張りの警官達が慌しくなる…!


牢の前を次々と駆ける警官…
遠くの部屋から警報のような音が響いてきた……!

男「俺達は特定した……その男は…先日中学校で起こったテロ事件の組織に勧誘された一人だってな……!」

のび太「…!!」

男「奴は人の命を奪っておきながら今もこの街で生きている………!」

男「だから俺達は……復讐するのさ…!」  ボゴォンッ…!!

雑居房の壁が破壊される…!
崩れた横穴から出てきた男がこちらに手招きをしている

その上着には 半分に破れた『大尉』のワッペンが貼られていた…!

大尉「よぉ……豚箱生活ご苦労さん。」

のび太「まさか留置所にまで刺客を向けるとは……!!」

男「待て、こいつは俺の仲間だ…あんたを此処から出してやる。その代わり、力を貸して貰いたい…!」

のび太「誰がそんな事っ…信じられるとでも…!!」

大尉「何か勘違いしてる様だが……俺達は道具の力が欲しいだけで、てめぇを助ける義理なんて無ぇんだぜ…!」

大尉が腰に差した鞘から刀を抜き取る……!

男「二人とも落ち着いてくれ!」

男が二人を静止する

大尉「ちっ…仕方ねえ……」

男「悪いな…少し時間をくれ……」

のび太は『うそ発見器』を取り出し、二人にいくつか質問をした…
ワッペン以外に洗脳されていないか、逆スパイではないか…
しかし、うそ発見器が反応する事も無く 二人の述べた事が真意であると証明された

男「『野比 のび太』…あんたと出会ったのは偶然。いや、俺達にとっちゃまさに『奇跡』ってやつだ……」

男「あんたがいなきゃ『少佐』は倒せないんだ…頼む…!」

のび太「………」

男「……俺達は、そりゃ所詮ただの他人だよ………」

男「あんたが戦いから逃げてるだとか……人の心に土足で踏み込むような事は言わない………」

男「だけど…この組織のボスは例え、危害を加えようとしなくたって無関係の人間に仇なしていくぜ…」

男「先日の無差別テロのように……いずれあんたの周りの人間にも、だ……!!」

男「あんたは自分が此処にいた方が安全だと思うかもしれない…だけど、守れたはずの命が守れずに失っていくなんて……あんたには耐えられるか!?」

のび太「………っ!!」

のび太は男の差し出した手を掴んだ…!

男「行こうぜ……!戦いを終わらせにな……!」

「脱走だ!!取り押さえろ!!」

警官達が入り乱れ出入り口を塞ぐ…!

大尉「おっと…そうはいかねえ…!」

大尉は懐から取り出した手帳を
警官隊の目の前にちらつかせた

大尉「『PASSPORT OF SATAN』……読めるな?俺達の悪行を見逃せ」

「ぐぬぬ……!!ここは異常無し!通っていいぞっ!」

『悪魔のパスポート』を提示すれば、どんな悪事を働いても免罪になる
その先入観がわずかな弛緩を招く…

三人が留置所から出ようとしたその時である

――――――パァン!!

背後から響く発砲音と共に男がその場に崩れ落ちた…!

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