【※死闘※】今日は、サイゼリヤとの最終決戦の日である!

温かいものでも飲みながら聞いてくれ。


はじめるよ。

今日は、俺にとって、伝統の戦いの最終節だ。

そう、イタリアンレストラン・早業のサイゼリヤとの最終決戦の日である。

サイゼリヤは、提供が異常なまでに早く、料理の値段も安いことで有名なレストランである。

その中で、サラダとパスタを同時にオーダーし、パスタが来る前にサラダが食べきれるかという激しい戦いが今日終わりを迎えるのである。

思えば、初戦はボロ負けだった。

教習所の帰りに偶然見つけたサイゼリヤに入った俺は、サラダとパスタを頼んだ。

すると、サイゼリヤ側は俺がセルフサービスの水を汲みに行く間に、サラダを持って来るという離れ技で俺を圧倒した。

当然、スタートに出遅れた俺は、次のパスタが来るまでにサラダを平らげることは敵わなかった。

まさに惨敗である。

それ以来、 俺は、サイゼリヤと死闘を繰り広げてきた。

戦いの基本は、店が空いているか混んでいるか、また、店員の提供技術が高いか低いかをを見極めることである。

それゆえ、新しいバイトの子が入っているのを見て勝利を確信したり、満員の客席をみてガッツポーズをしたり、
あるいは、反対に、全く客のいない時間帯に入ってしまって失意のうちに敗北したり、愛川さん、大場さんといった超強力なメンバー構成により大敗北は喫したり(俺を勝たせないよう、サイゼリヤ側が意識して布陣を敷いたのだと今も思っている)ということもあった。

そして、今日が、その戦いのフィナーレで、両者が5勝5敗で迎える第11戦なのである。


振り返り終えると、俺は店内を観察した。客はまばらに座り、混んでいるとも空いているとも言い難い状況である。

普段なら、勝ちを予想できる日であったが、問題は、最強の従業員、大場・愛川ペアをサイゼリヤ側が用意していることであった。

これでは、勝負は五分と五分、いや、それどころか負けてしまう可能性が出てきた。

さすがにサイゼリヤもこの最終戦の重みを承知しているようだ。

少し怖気付いてしまった俺は、弱気になるといつも行なっている自己暗示をかけることにした。

「サイゼリヤは、イタリアンレストラン。

俺は日本人。

これはいわば、国際大会で、日本とイタリアが戦うようなもの。

そして、ここは日本。

完全ホームのフィールド(日本で戦っているから)と観衆(周りの日本人客)。勝てる、これは勝てるぞ!」

今一度気合を入れなおした俺は、ついにオーダーすることを決意する。

今日は、シェフサラダ(サイゼリヤドレッシング)とトマトクリームスパゲティを食べる予定だ。

ちなみにシェフサラダは、一番勝てる(食べやすい)という今までの研究結果から選んだ。

勢い良く呼び出しボタンを押す。

…しかし、なかなか店員がやって来ない。

もしや、今日は愛川・大場ペアは不調か?

相手の不調を察し、俺は歓喜した。

間違いなくこれなら勝てる!

そんなことを考えていると大場さんがやってきた。

いかにも申し訳なさそうな表情を浮かべていたが、俺が怒るはずもない。

むしろ、俺は、余裕の笑みを浮かべ、先ほどまで考えていたオーダーを得意げに注文した。

オーダーを注文すると、俺は自分が浮かれていることに気づく。

この最終戦は気の抜けない一戦であり、もしかしたら、これが、俺を油断させるための愛川・大場ペアの作戦なのかもしれないのだ。

こんなことで、やすやすと引導を渡されたのでは、ここまでの激戦を経験して来た俺のメンツは丸潰れである。

俺は、負けられないということを自分の胸に刻み直し、気を引き締めた。


冷静になった俺は最終戦のために残しておいた作戦を発動した。

「セルフサービスの水をもらいに行かない作戦」である。

だが、これは、自分にもデメリットを伴う。

喉が乾いていても、水が飲めないという点である。

あの水分を奪うドレッシングの攻撃をかわしつつ、サラダを完食しなければならないのだ。

オーダーの前に水を取りに行くというのも、考えたが、それはこの戦いのルールに反する。オーダーをしてからが勝負の始まりなのだ。

これは恐らく愛川・大場ペアも予想していなかっただろう。

これまで俺はこのような戦いを予想し、毎回のように水を取りに行っていた。

そんな俺が初めて水を取りに行かなかったのだから。

――そして、時は来た。

運ばれてくるシェフサラダ。それを持つ大場さん。

そしてそれを見ている俺。

ささっ、とシルバーボックス(銀食器の入った箱)を俺の手の届きやすいところに置き、完璧な準備をして待つ。

一切油断はない。

「お待たせしました。シェフサラダでございます。」
テーブルにシェフサラダが置かれる。

俺は「ありがとうございます」と軽く会釈をしつつ、フォークを持ち上げながら、サラダと向き合う。

その瞬間、俺の脳内で衝撃が走った。

(いつもより…量が多いだと…?)

少しだけだが、ほんとに少しだけだが、量が多い。

よく考えれば、俺は、全従業員の内のホールに出ているスタッフの確認しか行ってこなかった。

今日に限ってサービス精神のある『キッチンの』従業員がいたとは…。

しかし、戦いは始まっている。

ここまでの思考は、わずか0.5秒(体感)のうちに終え、即座にサラダを食べはじめる。食べ始めればあっという間だった。

わざわざ腹をすかして店にきていることもあり、すぐにサラダは半分まで減った。

俺は、満面の笑みを浮かべ、しかし、食べる手を止めなかった。

まさに猛攻だった。

その時である。

?『失礼します。お呼びでしょうか。』

(なに!?…じゅ、従業員だと!?)

禁煙席に座った俺には見えなかった3人目の従業員がいた。

―――二十歳前後の新人女性アルバイターである。

(このタイミングでオーダーを取りに行く席を間違うだと?くそ!ありえない。こいつ、もしや、あの二人からの差し金じゃ…)
俺「あ…。(慌てて口を拭く)…こっちじゃないと思いますよー。」

新人「あ!すいません!失礼しました!」

俺「大丈夫ですよー。気にしないでください。アハ」

新人がこちらに背を向けると、すぐにフォークを持ち直し、サラダを食べ始める。

大幅な時間のロスが生じた。心の中は、焦りが支配していた。

短い会話だったが、人間として最低限の道徳心が働き、話す前に口を拭いたのがいけなかった。

その行為により、10秒ほど多く時間をロスしてしまった。

サラダを食べる焦りから、発狂する俺。

それを横からあざ笑うかのように見ている愛川・大場。と憎き新人アルバイター。

こいつらは、明らかに手を組んでいた(と思う)。

だが、俺も負けられない。この場面で意地を見せなければならない。

俺に残された秘策は出し尽くしてしまった。(まぁ、お冷のやつだけなんだけど)

あとは、俺の一番嫌いな根性論がものを言う状況になってしまった。

しかし、どうしようもない。

気合いで乗りきるしかないのだ。

ここまで勝つ算段を練っても、サイゼリヤはそれをいとも簡単に超えてくる。

全く恐ろしい店である。

―パスタの提供時間が迫る。

―サラダが減る。

ゴールが見えた!

俺は最後の一枚をフォークで突き刺す!

今までの絶望が徐々に勝利への期待へ変わっていく。

邪魔をする者は誰もいない。なにが起きようとこれを食べきれば正真正銘の勝利。

「失礼します。トマトクリームスパゲティでございます。」

邪魔された。期待も絶望に戻った。

背後から料理を持ってきた従業員に俺は気づかなかった。

ゆっくりと従業員を見る。そこに立っていたのはさっきのバイトだった。

トン、とあっさりとテーブルに乗せられた「それ」は、俺の思っていた色とは違った。

オーダーをする前には、勝利の祝いにふさわしい『紅白の赤』色であったはずが、俺がそのとき目にしたのは、高校時代に目にした『赤点の赤』によく似ていた。

2つの皿を目の前に俺は悲しみにくれた。

教習も佳境を迎え、教習帰りの道にあるこの店に来るのは、これが最後だなと思い、挑んだ最終戦がこんな結末になると誰が予想しただろうか。

それからのことはよく覚えていないが、相手の勝利を称えるという名目で、生チョコケーキを頼んだことは覚えている。

いや、よく考えてみれば、会計の時の大場さんの敗者に向ける笑みも覚えている。

俺は悲しみに暮れたまま帰途についた。

ごめん、みんな。
俺、勝てなかった。

こんな俺を許してくれ。

なんか負けたのにすごく満足感があるよ。

また再挑戦するね!

明日朝早いから、もう寝るとします。

ネットの反応

これは意表をつかれたw

文章も読みやすいし面白かったな

無益なことに時間と頭を使う事がこんなに面白い

世の中には料理提供が早いサイザリヤもあるんだな
俺の知ってるサイゼリヤはどこも遅いから、余裕で勝てるぜ

出典:http://vippers.jp/archives/5476091.html