【職員室】
男「なんすか?」
先生「……白々しい。なんで呼ばれたかくらい、わかっているんだろう?」
男「は?」
男(何度も言うが、俺はごく一般的な、特にこれといって特筆することも何も無い、普通の男子高校生である)
男(こんな風に先生に呼び出しを食らったのだって、人生で初めての経験だ)
男(心当たりなど、あるはずもない)
男「なんの………ことですか?」
先生「……………」
先生「本気で、言っているのか?」
男「……………!」
男(委員長のヤツと、同じ反応………?)
先生「………………」
男「……何を、見たんですか、先生」
先生「……君が、夜の商店街を徘徊するところをだよ」
男「…………!」
先生「日付はとっくに変わっていて、あたりは人一人いなかった。だからこそわかる……あれは、確かに君だった」
先生「でも、君にはその記憶がないという」
男「……先生は、その俺を見てどうしたんですか」
先生「もちろんとっ捕まえて、家に帰そうとしたさ。厳重注意もしてな」
先生「だけど……君はそれに応じようとはしなかった。気味の悪い笑顔をたたえながら、自分の家とは逆方向へ歩いていった」
男「………………」
先生「……恥ずかしい話だが、無性にそんな君が恐ろしくなってね」
先生「私は黙って歩き去る君を見送ることしかできなかった」