俺が何も聞いても、泣きながら「ごめんね」と言うだけで全く埒が開かなかった。
結婚式当日、俺は場合によっては「卒業」をやらかす腹積もりで式に出たが、
親父に「もし、おかしな真似をしたら俺はお前を殺して此処で死ぬ。
式が終わるまで黙って座っていろ」と言われて大人しくしていた。
彼女の相手の男は40前の脂ぎった男だった。
弁護士だか税理士をしているという。
俺は多分、奴に殺意の篭った視線を送っていただろう。
彼女の結婚式の後、俺は極度の鬱状態に陥った。
決まっていた就職も蹴ってしまっていた。
全日本大会も1回戦で格下相手にKO負け。
練習も極度に集中力を欠いた状態で危険だった。
ついには、禁足処分と半年間の休養を命じられ、
完全に習慣化していたロードワークと補強運動、
筋トレ以外には部屋に引き篭もる生活を続けた。
母は部屋の前に置いてある食事が朝無くなっているのを見て、
俺がまだ生きていると安心したそうだ。
本気で俺の自殺を心配していたらしい。
俺は、家族と顔を合わせるのを徹底的に避け続けた。
親父はそんな俺を見かねて限定解除を勧め、
それに従って試験場通いしたのが切っ掛けでカオリさんと
知り合い、彼女と付き合う事で俺は鬱から取りあえず脱する事が出来た。
いや、俺もかなりの糞野郎だし・・・・事情が事情だったんで親戚は責められないんだ。
俺が他の親戚の立場でも同じ行動取ったと思う。
事実の核心はここでは書けないけどね。