カオリさんと別れて2・3年後、彼女が離婚したと言う話を耳にした。
俺はバイトをしながら選手を続けていた。
結婚後も彼女が俺の出る試合の試合会場に来ていたのは、大学の後輩たちや妹の話で知っていた。
彼女の結婚に俺以上に納得できないでいた妹も、彼女の離婚後は、
「会ってあげなよ。ユカリお姉ちゃん、お兄ちゃんの事まだ好きなんだよ。
会って話だけでも聞いてあげなよ。お姉ちゃん可哀想だよ」
「お兄ちゃんだって、他の女の人と付き合ってたじゃない。元に戻れないにしても、許してあげなよ」
許す、許さないではなく、俺は彼女に会うのが辛すぎて彼女を避け続けた。
彼女に逢ったら心が折れてしまいそうだった。
後輩やセコンドに付いた仲間にも自分の控え室やウォーミングアップスペースに近づけるなと厳命した。
今更逢って何を話すつもりなのか?
俺は『頼むから、俺の前から消えてくれ!』と確かに思っていたよ。
思えば、そんな状態が更に1・2年以上続いていたんだな。
あっという間だったよ。
相変わらず俺は彼女を避け続けていた。
今更、どんな声を掛ければいい?
でも、どこかで彼女の姿を探していた所があったのも確かだった。
生徒や仲間に囲まれながら目は彼女を探していた。
彼女の姿を見つけるとホッとした。
我ながら度し難い奴だと思うよ。
そんなある日、彼女の訃報が飛び込んできた。