【※ドラえもん※】なんと、高校生になった出木杉は落ちこぼれになっていた。教師「出木杉くん。」出木杉「・・・・・・はい。」

【深相】

ドラえもん「ねぇ、出木杉くん。」

出木杉「ん?」

ドラえもん「僕がこんなこと言っても、何のフォローにもならないかも知れないけど・・・・・・」

出木杉「?」

ドラえもん「あんまり自分を責めないでね。」

出木杉「えっ?」

ドラえもん「ほら、さっき高校で勉強が上手くいってないのは自分の努力が足りないせいだって言ってたでしょ? そんな責任感が強くて真面目な出木杉くんだから、きっと今の話を聞いて『なんでもっとしずかちゃんにアタックしなかったんだ』『のび太くんを悪者扱いするなんて最低だ』って、自己嫌悪になってるんじゃないかなぁと思って。」

出木杉「うっ!」ギクッ

またしても心を見透かされてしまった。

厄介な相手だ。

だけどドラえもん。

そこまで頭が回るのなら、自己嫌悪に陥ってる事を指摘されては、更なる自己嫌悪に苛まれるという心理にも理解を示して欲しいものだね。

ドラえもん「ごめんね。 自己嫌悪に陥ってる事を指摘されたりしたら、余計に嫌な気持ちになっちゃうよね。」

・・・・・・本当に厄介な相手だ。

ドラえもん「ただ僕はね、そうやって『人生が上手くいかないのは全部自分のせいだ』って抱え込んで、出木杉くんが壊れてしまったら悲しいなって思うんだ。 人生に挫折や失敗は付き物だし、何かを諦めたり妥協したりしなきゃいけない場面だってたくさんある。 でも、そこから何かを得る事だってあるじゃない。 だからさ、何もかも『自分が悪い。自分が悪い。』って、抱え込まないで欲しいな。」

(『焦りすぎてヒデが体壊しちゃったり、勉強にしか興味のない寂しい人になっちゃう方が、お母さんずっと嫌だなぁ。』)

(『もっとさ、自分に逃げ道を作って、優しくしてあげてよ。』)

出木杉「・・・・・・なんで・・・なんで、そんな優しい事言うんだよ。 僕は・・・・・・のび太くんに嫉妬して、君達にあらぬ疑いをかけた最低な人間なのに・・・」

ドラえもん「最低なんかじゃないよ。 だって、出木杉くんはそれだけしずかちゃんを愛してるって事じゃないか。 一人の人間をこんなに深く愛せるのは、綺麗な心を持ってる証拠だよ。君も、そしてのび太くんもね。」

ドラえもん「あと、君はお母さんに八つ当たりしてしまった事に対しても、すっごく後悔してるじゃないか。母親想いじゃなきゃ、そんな後悔なんてまず感じたりはしないよ。」

出木杉「ドラえもん・・・・・・」

ドラえもん「それにね、君はのび太くんの目標なんだよ。」

出木杉「えっ?」

ドラえもん「さっき言った、のび太くんが数学で71点を取った日。のび太くんは学校から帰って来て、こう言ったんだ。」

『ドラえもん。 僕、今回は死ぬほど頑張って71点だった。 でも、出木杉は僕なんかよりずっと高い点を取ってるに違いない。 こうやって自分で努力してみて分かったよ。 出木杉はやっぱりすごいや。 僕もアイツみたいになれるよう頑張るよ。』

ドラえもん「ってね。」

出木杉「そう・・・なんだ。」

ドラえもん「うん。 のび太くんは君という目標ができて、変わる事ができたんだ。 僕はそれが本当に嬉しくて、君にもすっごく感謝してるんだよ。 まぁ、自分の知らないところで勝手に感謝されたって、迷惑なだけだろうけどね。」

出木杉「いや・・・別にそんな・・・・・・」

ドラえもん「だからね、僕は君にも幸せになって欲しいって心から思ってるんだ。 出木杉くん。 どうか自分を責めたりして、悲しい目をしないでくれないかな?」


頬に水滴が伝うのを感じた。

熱い水滴だ。

後から後から湧いてくる。

のび太くんの目標が僕?

って事は、僕は知らず知らずのうちにライバルを育て、そのライバルと想い人の取り合いをした結果、敗北したという事だ。

そして、その事を勝手に恨み、醜い疑念を募らせた。

だけど、ドラえもんはそれさえも許してくれた。

なんて事はない。

ただ、僕が一人で悲劇の主人公を気取っていただけ。

そして、周囲の人々は僕の空回りも全て内包してくれるぐらい、優しかっただけ。

言い訳のしょうもない。

僕の完全なる敗北だ。

悔しくないと言えば嘘になるが、不思議と今は悔しさよりも爽快感が勝っている。

その爽快感が涙を引き出していた。

成績も、しずかちゃんの事も、ずっと諦めきれなかった。

「まだ終わりじゃない」と、言い聞かせ続けてきた。

だがいつしかそれは僕をがんじがらめにし、窒息寸前にまで追い込んでいた。

“諦めない”という呪縛。

その呪縛から今、僕は解放された。

本当はずっと、これを望んでいたのかも知れない。

清々しい。


今の僕は完全なる0。

0点だ。

だけど、0点は無なんかじゃない。

ここからまた100点、120点・・・・・・いや、無限の最高得点を目指す道が始まるんだ。

だけど、その前にまず、やらなきゃいけない事がある。

それは、

出木杉「ドラえもん。」

ドラえもん「なに?」

出木杉「・・・・・・ありがとう。」

帰って母さんに謝る事だ。

おしまい。

出典:http://ssplus.blog.jp/archives/13731082.html

▼ 続きは次のページにて♪ ▼
前のページへ