ママ『悪いけどちょっと部屋から出ていってもらえるかしら』
ママ『のびちゃんと二人で話がしたいの』
ドラえもん『……分かった』
ママ『のびちゃん』
のび太『………………』
ママ『返事をしなさい』
のび太『………………』
ママ『前にも同じようなことをやったわね』
ママ『私がどんなに言っても何も言わない』
ママ『のびちゃんがこうなったあの日となんら変わっていないわよ』
ママ『いいえ、本当は最初から何一つ変わっていなかった』
ママ『あの時も言ったけどのびちゃん、あなたやっぱり――』
のび太『うるさい!』
のび太『ママはいつもそうだった! 今も”あの時”も!』
のび太『僕ね……あの日一日中ママに言われた言葉が頭から離れなかったんだ』
のび太『何度も何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も!』
のび太『だからさぁ、もう分からなくなっちゃったよ……』
のび太『最初のころは考えることすらしなかったけど冷静になればなるほど鮮明に思い出せるようになるんだ』
のび太『そして考えるようになるんだよ』
のび太『どうして、何で、誰のために、今の僕のためになったんだろうって』
のび太『これもね、考えているうちに分からなくなっちゃったんだ』
のび太『何も考えたくない、何もしたくないって思うようになり始めてからはとっても気が楽になったんだ』
のび太『人に会いたくなくなったらね、また楽になったんだよ』
のび太『それからは押入れが僕の全てになった』
のび太『そこにいれば誰も来ない、誰にも会わないんだ』
のび太『情報ならいくらでも手に入れられた』
のび太『ドラえもんには感謝するよ。バカ正直にいっつも同じところにスペアポケットを置いておいてくれて
いるんだから』
のび太『未来の道具はすごいよ、本当に』
のび太『ねぇもういいでしょ。僕は誰にも迷惑かけてないし誰かに必要とされているわけでもない』
のび太『食事だって道具を使えばどうにでもなる』