後輩女「わたしが……男先輩と二人きりになって、男先輩を意識していないと思っています?」
男「………………」カタカタ
後輩女「………………」
男「この一年近く二人きりでやってきた。だから、そういうことは起きないと思ってる」
後輩女「……だから、謝るべきなんです。男先輩はわたしのこと全然わかっていません」
男「わかってない……か。うん、俺は君のことをほとんど知らない。誕生日も好きな食べ物も知らない。それで良いと思ってる。君とは仕事上の
上司と部下だ。それ以上でもそれ以下でも無いんだよ」
後輩女「だから、わたしのことを知る必要なんて無い……と思っているんですか?」
男「……否定はしない。でも、肯定もしたくない。君のことは……その……」
後輩女「男先輩……?」
男「………………」
後輩女(……男先輩? また……雰囲気が……)
男「……煙草」
後輩女「え?」
男「煙草吸ってくる」ガタッ
後輩女「男先輩? どうして急に……?」
男「逃げたと思ってくれて構わない。煙草吸わせてくれ」バタン
<2/27・MON>
後輩女「おはようございます」
男「………………」カタカタ
後輩女「男先輩……?」
男「……あ、ケホッ、おはよ」カタカタ
後輩女(……?)
男「……ゼィ……ゼィ」カタカタ
後輩女「男先輩、どうかしたんですか?」
男「いや……何も……」カタカタ
後輩女「男先輩、目のクマが凄いです。顔も真っ青ですし……何かあったんですか?」
男「いや……ゼィ、何も無いよ」
後輩女「そう……ですか」
男「何も無い……ゼィ、何も無いから。俺はいつも通りだから……」
後輩女「………………」
男「ちょっと煙草……吸ってくるよ……ゼィ」バタン
後輩女(変……あんな男先輩、初めて)
男「……ゼィ……ゼィ」カタカタ
後輩女「………………」カタカタ
男「……ゼィ……ゼィ」カタカタ
後輩女「………………」カタカタ
男「……ゴホッ……ケホ」カタカタ
後輩女「……風邪、ですか?」
男「ヒュー、違う……何も無い。俺はいつも通り」カタカタ
後輩女「今日の男先輩はいつもと違っています。ぜいぜい言ってますし、苦しそうな咳もしてるじゃないですか?」
男「違う……熱は無い……ゼィ、いつも通り」カタカタ
後輩女「一回病院で診てもらうべきです。肺の病気とか、そんなところも心配です」
男「君が、ゴホッ……心配してどうする。仮に体調が悪いとしても、ゼィ、俺の問題だ。病院に行くより、ゼィ、仕事をしていた方が、ゼィ、よっぽど良い」
後輩女「『仕事なんて後でどうにでもなる』って、わたしに言ってくれたじゃないですか……。だからわたし、前に一関に行かなかったんですよ?
男先輩がそんなんじゃ、全然説得力が無いです」
男「……ゼィ……俺は良いんだよ」カタカタ
後輩女「良くありません! 男先輩が抜けたら誰が品質管理をリードするんですか!?」
男「仕事はする。仕事をしていれば……何も、ゼィ、考えなくて良いんだから……」カタカタカタカタ