二十歳の七月くらいの時の話なんだが、
その頃、俺はとにかく金に困ってた。
白米とみそ汁以外のものを口にしてなくてさ、
数日前、ウェイターのバイト中に三回ぶっ倒れて、
そろそろ栄養のあるものを食べないとまずいと思った。
金になるものといったら、家具、数十枚のCD、
それに数百冊の蔵書の他には考えられなかったな。
ほとんど中古品で、たいした価値はないんだが、
それでも一か月の食費くらいにはなるかと思って、
できるだけ新品に近付けようと入念に掃除して、
行きつけの古書店や楽器屋に売りに行ったわけだ。