のび太が撃つ寸前
ジャイアンは後ろに距離をとり
空気ピストルの弾を単発ずつ正確に往なしてみせた
のび太「野球が上手いとかってレベルじゃない…!」
のび太「今のは…何時どの指から発射されるか分かってないと絶対に出来ないぞ…!」
のび太「だ…駄目だ…次に詰め寄られたら……!」
ジャイアンから距離を取る為
のび太はタケコプターを取り出しスイッチを押した
ジャイアン「うははは!道具に引きずられてやがんの!逃がすかよ!」
のび太「この眩暈と…感覚が戻らない事にはどうしようもない……!」
――――――…
片手に掴んだタケコプターの勢いだけでひたすら逃げ続けるも
とうとう住宅街の行き止まりに追い詰められてしまった…
ジャイアン「一々手こずらせやがって…だけどもう終わりだ…」
のび太「これだ…今朝の…この感じ……!」
のび太「この追い詰められた状態を待ってたんだ…!」
のび太はジキルハイドを一錠飲みこんだ
のび太「よくよく考えてみれば逆転できる好機はいくらでもあるじゃない…!」
ジャイアン「血迷ったかのび太!ギッタギタにしてやる!」
のび太「『コエカタマリン』…この液体を飲めば発した声が固体で出てくる…」
のび太「振れば必ず当たる黄金バットでも…『音速』に反応できるかい…?」
ジャイアン「俺様に打てない打球は無い!」
のび太「そうかい…!!」ゴク…!
コエカタマリンを飲み干すのび太……
のび太「………『ヨ』!!」
ジャイアン「!?」
のび太は背後の壁に向かって声を発し
跳ね返って来た個体の『ヨ』にしがみついた
ジャイアン「何かと思えば所詮のび太!逃げるだけかよ!」
ジャイアンものび太と同じく『ヨ』の文字にしがみついた
ジャイアン「へへへへ…この字が地に降りた瞬間がのび太の最後だ…!」
のび太「そうそう…君にもこの字にしがみ付いて貰わなきゃ困る」
ジャイアン「何だと!?」
のび太「わざわざ掴みやすい文字にしたんだからね」
のび太「そしてこれでハッキリした事がある、今の君の反応速度は『異常』だ」
ジャイアン「…!」
のび太「自分のタイミングで発した文字、僕は稲妻ソックスの足で飛び込んでギリギリだった…」
のび太「それなのに君は跳ね返って来た文字を難なく掴んだ…」
ジャイアン「…お、俺にとっちゃ朝飯前よ」
のび太「さっきもおかしいと思ったよ…空気ピストルを撃つ寸前、君は僕から距離を置いた」
のび太「距離をとるという事は『反射』ではなく僕に『反応』して打っている事になる」
ジャイアン「………」
のび太「その『眼』……何秒先が見えているんだい?」
ジャイアン「な、何のことだか…」
ジャイアンは明らかに焦りを見せていた
のび太「とぼけるんじゃあない。ドラえもんの道具にはそういうのがあるんだ」
のび太「『イマニ目玉』だったっけな。ダイヤルを合わせた分だけ未来が見える」
ジャイアン「のび太の癖に生意気だぞ!ここで叩き落してやろうか!」
ジャイアンはバットを振り上げて脅すも、のび太は微動だにしない
ジャイアン〈こ…こいつ…!ちっとも怯えてねぇ…!〉
のび太「僕が怖いのはジャイアンだ。ワッペンで操られた君じゃあない」
ジャイアン「のび太ァ!!」
のび太「どうやらあまり先の未来をみていないようだね」
ジャイアン「あ!?こんにゃろ!下に飛び降りる気だな!?」
のび太が飛び降りると同時にジャイアンも下に飛び降りた
ジャイアン「海!?」
ザパァアァァン!!
ジャイアン〈あ…あぶねぇ…息継ぎ間に合ったぜ…!〉
ジャイアン「もが……ゴバァ!?」
のび太〈今更気づいても手遅れだよ!〉
のび太「『ア』!!」
のび太の発した声の塊は
ジャイアンを陸地へと叩きつけた
ジャイアン「」ピクピク
のび太〈……いくら予知が出来てもここは海…水の中じゃあ素振りもままならない〉
のび太〈それに水中では地上より数倍早く音が伝わるんだ、今の君じゃ予知出来ても絶対に打てない訳さ…〉
ジャイアン「うう…ここは…」
のび太「ジャイアン!気がついたかい!?」
ジャイアン「ああ…終わったんだな…」
のび太「ワッペンが上着に付いてたおかげで助かったよ。これを脱いでおけばもう大丈夫」
ジャイアン「…面目ねぇ…」
のび太「気にしないでよ。『イマニ目玉』は壊れてたけど『黄金バット』は…回収できた……」
ジャイアン「いいや!俺の気がおさまらねぇ!お前の気がすむまで俺を殴……のび太?」
ジャイアン「寝てやがる……」
ジャイアン「……タケコプター、使わせてもらうぜ」
ピンポーン
スネ夫「はいはい今出ます〈予約した例のゲームが届いたのかな…〉」ガチャ
ジャイアン「よぉスネ夫」