スネ夫「ジャイアン!?それに…のび太なんか担いでどうしたんだい?」
ジャイアン「わけは後で話す、ちょっと上がらせてもらうぜ」
スネ夫「え…ええどうぞどうぞ〈最新ゲームが取られちゃう…〉」
ジャイアン「……今日は何もとらねぇから安心しろ」
スネ夫「…嘘だ!絶対いつもみたいにとる!」
ジャイアン「!おい怪我人を介抱するだけだって…」
スネ夫「許さないぞ!いつもいつも!ジャイアンが悪いんだ!」
ジャイアン「うぉぉ!!」
のび太を背負った無防備のジャイアンに
スネ夫が殴りかかる
スネ夫「『チャンピオングローブ』!!これを付ければどんな相手にも負けない!!」
ジャイアン「や…やろう…!既にワッペンを貼られてたか…!」
スネ夫「ジャイアンは剥がしたのかい?『軍曹』の僕が命令してやろうと思ってたのに」
のび太「うっ…今の衝撃は…」
ジャイアン「のび太、起きたか…どうやらスネ夫も手遅れらしいぜ…!」
のび太「それよりジャイアン……脇腹を…殴られたのかい…?」
ジャイアン「こんなのどうってことないぜ…うぷっ!?」
強がるジャイアンだったが
不意打ちのダメージは相当なものだった
のび太「くそう…僕は…立ち上がる余力も…ない…」
ジャイアン「俺のツケを払う時が来たんだ…!のび太はそこで寝てな」
のび太「む…無茶だ……チャンピオングローブ相手に…」
のび太「せめてこれを…あのグローブと互角に戦える道具……」
のび太は『あいこグローブ』をジャイアンに差し出した
ジャイアン「道具で勝つってのは気にいらないが…相手が使っているんじゃしかたねぇ!」
スネ夫「ジャイアン!プライドを捨てるのかい!?君ほどの男が!」
ジャイアン「見損なってくれるなよ…!全部……お前等の為だぜ!」
咆哮とともに繰り出したジャイアンの拳は
チャンピオングローブのガードを弾きとばした
スネ夫「フリッカージャブか!………腐ってもジャイアン、喧嘩慣れしてやがる…でもね!」
ジャイアン「―――っ!」
ジャイアンがたて続けに繰り出した拳を捌き
チャンピオングローブはジャイアンの頬にめり込んだ
のび太「ク…クロスカウンター……!」
スネ夫「このグローブはあらゆる戦闘技術を体現出来るんだ!」
ジャイアン「くそっ…油断してたぜ…!」
のび太「ス…スネ夫のあの眼…!生体実験をしている科学者の様な…冷静と情熱が入り混じったあの眼は…!」
のび太「『観察』している…!今のダメージがどの程度か観察しているぞ…!」
ジャイアン「スネ夫め……な…生意気なやつだ…その余裕をへし折ってやるぜ!」
のび太「僕も…何とか他の道具で援護を…!」ゴソゴソ
?「ふむ…状況は芳しく無い様だ……」
玄関で倒れているのび太の背後から突如男が現れた
スネ夫「『曹長』!?まだいらしてたんですか!?」
ジャイアン「おめぇは…さっき俺にワッペンを貼りやがった奴…!」
曹長、と呼ばれた男がため息をつきながら応えた
曹長「失態ですね……どうやら服にワッペンを貼るのはいけなかった様で…」
のび太〈スネ夫も服にワッペンが…!〉
曹長「いや~ボスにお叱りを受ける事になる…『准士官』殿が出木杉という少年の服に貼ったと自慢していたのでつい…」
ジャイアン「なんだと!?出木杉も悪者になっちまったってのか!?」
曹長「それにしても野比氏は抜け目のない…か弱い娘には先に完全バリアを施しているなんてね」
のび太「っ!…ジャイアン!ワッペンの付いたスネ夫の服を破けばこっちの勝ちだ!」
ジャイアン「わかってるけどよ…!それが出来ないからかきたくも無い汗をかいてるんだぜ…!」
曹長「おっと…貴方にはここでゲームオーバーとなってもらいますよ」
チク…タク…チク…タク…
のび太「…え!?」
のび太は音のする方を見上げる…!
ジャイアンの首筋に貼られているシール…
あれは…!
曹長「『チクタクボンワッペン』…時限爆弾、とでも言っておきましょうか」
ジャイアン「俺の首にッ!?」
曹長「それと…野比氏にも特別な物を貼っておきましたよ。君の『ずらしんぼ』が厄介なんでね」
曹長が手首を指差し
侮蔑の微笑を含みながら言った
のび太「こ…この道具は!!!」
のび太の手首には一枚のバンドエイドが貼られていた…
このバンドエイド、『ドジバン』といって
貼られたら何をやろうとしても失敗に終わる
のび太「い…いつの間に貼ったんだ!?」
曹長「ハハハ!爆発に巻き込まれるのは嫌なので外から観察しておきますよ!」
曹長は望遠鏡を覗き込むと姿を消した
※手に取り望遠鏡
望遠鏡で覗き込んだ物を手で掴み、取り寄せられる。木など固定された物を掴むと逆に向こうへ移動できる
のび太「望遠鏡で遠くから貼ったのか…この道具…はやく剥がさないと…」
のび太「『ずらしんぼ』で…バンドエイドを地面にずらす!」
スネ夫「うわぁぁぁぁぁ!!!」
ボキッ!
のび太「っ!?」
ジャイアンと交戦中のスネ夫がこちらに吹っ飛ばされたはずみで
握っていた『ずらすんぼ』が折れてしまった
曹長「フフフフフ…本来なら剛田氏の裏切りを上に報告しに行きたいところですが…」
曹長「人が苦しんでいる様を見逃してしまうのは勿体ない…」
のび太「木の上で高みの見物…いつでも逃げれる準備はしてあるって事か…」
のび太〈マズいぞ…新しい道具を出したら…僕は必ず『失敗』する…!〉
相手はいつでも逃げ出せる位置から『手に取り望遠鏡』で様子を伺っている
今、道具を取り出そうとすれば失敗に終わり
最悪、『取り寄せバッグ』が奪取されてしまうのだ
『あなただけのものガス』を吹きかけてあるとは言え『ドジバン』が付いた今、安全だと保障できるものでは無かった…
のび太〈何とかしてこの状況を切り抜けなければ……!〉
曹長〈…おや?野比氏の手…道具を取り出す素振りは見せていない様でしたが…?〉
曹長が現れる前…
スネ夫と対峙したジャイアンを援護するため
のび太はずらしんぼの他に、もうひとつ道具を取り出していた