男「いや、用事はないけど……寄りたい所って、ひょっとして俺と会ったっていうところですか?」
女「えぇ、そうね。 何故分かったの?」
男「それぐらいしか、俺と女さんを結ぶモノはないから、ですかね」
女「……じゃあ、行きましょうか」
男「分かった、急いで支度してきますよ」
ー公園ー
男「この公園は?」
女「さっき、私達が会ったという場所に行ったじゃない? そこで泣いていた私は、ここに案内されたわ」
男「ふ~ん……確かにこの公園は来たことあるけど、女さんがここに住んでいたのっていつ頃の話?」
女「そうね、保育所……ぐらいかも。 もしくは、小学校の低学年ね」
男「う~ん……」
女「どうかしたの? 難しい表情をしているけれど」
男「いや……学校側から見れば、俺の家は確かにこっちの方面なんですけどね。 ここからだと、俺の家は結構離れているんで」
女「どれくらい?」
男「歩いて……十分ってところ」
女「それくらいだったら、保育所の頃でも親御さんがいらっしゃれば来れるんじゃないかしら?」
男「いや、こことは反対方向にもう一個公園あるのは知ってます?」
女「……知らないわ」
男「俺の家からだと、そっちの方が近いんで。 五分あれば行けるから」
女「…………」
男「だから、俺はそっちの公園で遊んだなぁっていう漠然な記憶はあるんですけど、こっちの公園で何かした記憶はないんですよ」
女「……ふふふっ」
男「……? どうしたんですか?」
女「このまま強引に押し通してもいいかなとは思ったけれど、これ以上嘘を重ねるのも、私の小さな良心が許してくれそうにないわね」
男「は……? 嘘、って……何が?」
女「全部よ。 あなたと会ったかもしれない、という話自体が嘘なの」