男「はぁッ!? どういう……」
女「そもそも、転校することすらも初めてなのよ。 だから、私はこの場所に来たことなんてなかったわ」
男「えぇ……?」
女「初めての転校で、私は不安だった。 だから、転校先で最初からうまくクラスに馴染むにはどうすればいいか、延々と考えていたわ」
女「最終的に思いついたのが、今日私がしたこと。 “この地で一方的な顔馴染みを作り、そこから輪を広げる”」
男「えっと……じゃあ、俺はそもそも女さんとは知り合いじゃないってこと……?」
女「そうね。 初対面だわ」
男「な、なんだそれは……凄い脱力感……」
女「それと、一つだけあなたに言っておきたいことがあるの」
男「……?」
女「私がクラスの中からあなたを選んだ理由、分かるかしら?」
男「いや、分かんないし、もうどんな理由でも驚かないです……」
女「あなたに一目惚れしたからよ」
男「…………ッッ!?」
女「知り合いのフリをして溶け込むのなら、いっそ最初私が選ぶ人はカッコイイ人にしたいじゃない?」
男「そ、そう、なのか……?」
女「あなたも、私と同じことをするとなれば同じようにしたいでしょ?」
男「それは……まぁ、そうっすね」
女「おめでとう、あなたは私に選ばれたのよ」
男「あ、ありがとう……? え、これはお礼を言うところ?」
女「それで、返事はどうするのかしら?」
男「返事って……えっ!? さっきのって本気なんですか!?」
女「当たり前よ。 私が冗談を言うような人に見えるのかしら?」
男「平然と言いそうに見えますけど」
女「……よく分かったわね」
男「オイ!?」
女「それはともかくとして、さっき私が言った“一目惚れ”に関しては事実よ。 私はあなたのことが好き」
男「なっ、いや、でも、俺達会ったばっかりじゃ……?」
女「私は、インスピレーションをとても大事にしてるの。 これと決めたら、何も譲らないわ」