さすがにこれには焦る。
声が届かないんじゃあ、聴衆をだませない。ウソをつけない。
焦る俺。だけど救いの手は予想外のところから来た。
不思議なことに歓声があがったんだわ。
なにかと思ったら、マイクをもった会長が舞台袖から出てきてた。
会長は俺のところへ来ると、
「がんばって」とにっこり笑って俺にマイクを手渡した。
俺は思わずかたまってしまった。
誰かが歓声をあげて、なぜか拍手がわいた。
そのあと俺は、こころにもないことをひたすらしゃべりまくった。
演説を終えてパイプ椅子にすわると、ここちのいい達成感がわいてきた。
生徒会に立候補するヤツって意外と多いんだよな。
演説がはじまってから、休憩をふくめて一時間半はたっていた。
とちゅうから半分寝かけてたんだよ、俺。
たぶん、半分以上の生徒も同じような状態だったはず。
でも急に目が覚めた。
会長が演説をはじめたんだよ。