俺だけじゃなかったんだよ。
会長が話し出したら、みんな顔をあげて聞いてんだよな。
この人の声は不思議な魅力があるのかもしれない。
内容じたいはごく普通だったし、簡潔で演説時間も一番短かった。
きれいにお辞儀すると、会長は舞台袖にもどった。
ゆいいつ、もっと聞いていたいって思わせる演説だったね。
長すぎる演説会がおわって教室でクロダとダベっていると、
先輩から電話がかかってきた。
『お前当選したよ。ぶっちぎりだったって』
どうして選挙管理員でもない先輩が、選挙結果を知っているのか。
しかも、結果報告は三日後のはずだ。
『選挙管理員のヤツから聞いたんだよ。
てか、オレの言ったとおりになったでしょ?」
あのマイクトラブルは、先輩の仕組んだものだった。
選挙管理員をうまく言いくるめたらしい。
ちなみに最初に声をあげたのも、先輩だったそうだ。