彼女の頭を優しく撫でる。
オレたちが“恋人”でいられる時間は短い。
オレが何かの理由を見つけて、彼女の家に来るとき。
しかも、彼女しか家に居ないとき。
学校では、オレは彼女とは別のクラスで、オレはただのサッカー部員で、彼女は生徒会会計なんだ。
だからオレは、彼女を抱きしめていることが許されるほんの短い時間に、出来るだけ彼女のぬくもりを補給することにした。
「じゃあ今日で2学期は終わりだ。明日から冬休みだがあまり羽目を外すんじゃないぞ」
期末テストの成績表が配られたのち、担任は毎度お決まりのフレーズを発した。
季節は冬であるが、比較的都会であるこの街には雪は降らない。
それでも教室は肌寒く、生徒たちは心持ち、ストーブのある後方に寄っている。
「なあ、お前今年も来るだろ?」
男「ん?何の話だ?」
「だから、みんなでクリスマス会やるって。去年もやっただろ」
男「あー・・・24日?」
「そうそう。今年もカラオケみたいだぞ」
男「あー・・・そういや今年はあれだ。親戚の家に行くからオレはパスするわ」
「マジかよ。クリスマスに?」
男「あー。そうみたい」
「ふーん・・・まあいいや。予定変わったら連絡くれ」
男「おー」
男「じゃあオレ帰るわ」
「おう。また来年な」
男「おー」
ガラガラ
てくてく
男「・・・」
ピッ・・・ポチポチ・・
男『大丈夫か?』
ヴー・・ヴー・・
『熱下がったし、もうだいぶいいわ』
ピッピッピ・・
男『今HR終わった。後で見舞い、行ってもいいか?』
ヴー・・ヴー・・
『18時以降にしてください』
ピッピッ・・
男『わかった』
ピンポーン
女母「はーい」
ガチャ
男「あ、こんばんは」
女母「男君、こんばんは。上がってください」
男「あ、スイマセン。コレ、お見舞いです」
女母「あら、ありがとう。後で剥いて持っていくわね」
男「はい」