女「私のせいで・・・部活辞めたの?」
男「せいって・・そういう訳じゃない。レギュラーになれそうになかったら辞めるって決めてたし」
女「私っ・・・・あなたとこうしてる時間は幸せ。でも・・・私のせいであなたの可能性を潰してしまうのには耐えられない!」
男「お・・落ち着けよ。違う。本当に決めてたことなんだ。もう3年だし、勉強のこともある。だから、今回レギュラーになれなかったら辞めるってのは決めてた。お前のことは関係ない」
女「・・・・本当?」
男「ほんとだ」
女「・・・・うん・・・ごめん。大きな声出して」
男「オレの方こそごめん。辞めるときにちゃんと言っておけばよかったな」
・・・これは嘘だ。
オレは、彼女といる時間のために部活を辞めた。
オレにとっては、なんとなくやっていたサッカーより、彼女との時間の方が何倍も大切だった。
それだけの、単純な事だった。
でも彼女にとっては、自分自身が恋人の枷になるのが耐えられないのだ。
出会って初めて聞いた彼女の大声は、俺にそれを強く理解させた。
驚いた俺は、平静を装い、泣きそうになっている彼女の頭を優しく撫でた。
***
彼女を知ってから、二回目の夏が来た。
今年の夏は追試も、部活もない。
そのおかげでオレは、多くの時間を彼女と過ごすことができた。
彼女が生徒会のないある日、珍しく彼女が喫茶店でオレにリクエストをしてきた。
女「男君」
男「ん?」
女「他県なんだけどね、ここ行きたいの」
男「ん?“花ノ王国”?」
女「そう。今はマリーゴールドとヒマワリが見ごろなんだって。男君が嫌じゃなかったら行かない?」
男「いいよ。でも遠いけど大丈夫か?」
女「うん。移動はお母さんにお願いして車出してもらおうかな」
男「あー・・・その方がいいな」
女「じゃああなたの都合のいい日を教えてください」
男「いつでもいいけど、平日のがいいんじゃないのか?混んでるだろうし」
女「うん・・・あ、お母さん仕事だから平日は無理かもしれないわ」
男「ああ、そっか。それじゃいつでもいいよ。任せる」
女「うーん・・・とりあえず今日帰ったら聞いてみます」