女「知っていますか?明日から大学の学祭なんですよ」
男「・・・え?」
女「そろそろ前夜祭が始まる時間です。一緒に見に行きませんか?」
男「・・・いや、悪いですから」
女「・・・人の好意は素直に受けたらどうですか?」
男「・・・・」
教室を出ようかと立ち上がった。
その瞬間、オレの背中を見えない何かが押した気がした。
男「・・・ああ」
女「?」
男「・・・・そうですね。行きます。オレ、あんまり行事とか参加してこなかったんでよく分かんないんですけど」
女「私もよく分かりませんけど・・・とりあえず人が集まっている方に行けばいいんじゃないですかね?」
男「そうですね」
***
***
***
それからおよそ、20年が経った。
―――――ある墓所。
「久しぶり。今年も来たよ」
中年の男が墓所の一角で花を手向けていた。
芝生の中にあるその墓石は、きれいに磨かれていた。
「今年で、うちの子も中学生になったんだよ」
「早いもんだよな・・・でもちゃんとお前が言ったことは守ってるからな」
「今年は妻は用事で来れないとさ」
「大丈夫。ケンカとかじゃないよ」
「あの時オレが前に進めたのも、妻のおかげだから。ケンカなんてしないさ」
Prrrrrrrr
「おわっ・・社長からだ。仕事だなこりゃ・・・じゃあまた来るから」
ピッ
「はいもしもし?」
夏の風が緑の中を駆け抜けた。
さっきまで男がいた墓石の上に置かれた、数えきれないほどの数のヒマワリの花が優しく揺れた。
優しい音に混じって微かに声が聞こえた気がした。
―――――ありがとう。
出典:http://www.ureshino3406.com/entry/2017/02/25/153124