男「……昨日、妹が泣きながら帰ってきた」
友「は………?」
男「いつもより帰りが遅いから、少し心配はしてたんだ。でも友達の多い妹のことだ、大方マックにでも行っているのだろうと思って、大して探そうともしなかった」
友「な、何言ってんだよ、お前……」
男「……のんきに、テレビなんかみて笑ってたよ。撮りだめしてたバラエティーがあったからな、妹もいないし、これでゆっくり見ることができると思ってな」
男「俺がそんなことをしている間、妹はどんな目にあっていたと思う……?」
友「や……やめ、やめてくれ……」
男「……泣きながら語ってくれたよ、小太りの眼鏡をかけた男に路地裏へ連れ込まれ、そして………」
友「わ、わかった!!俺が悪かった!!もう聞かない!!だからその生々しい話しをやめてくれ!!」
男(……すまん、妹!)
男(昨日ドッペルゲンガーのことを調べているうちに、俺は一つの結論にたどり着いた)
男(本来、ドッペルゲンガーへの対処法など存在はしないのだが……)
男(そもそも、俺の経験しているこの怪異は、本来のドッペルゲンガーとは少し異なるものだ)
男(ドッペルゲンガーは長い時間をかけて自分の影として張り付いているか、ふとした拍子に自分の分身を視認してしまうか、ドッペルゲンガーにまつわる逸話とは、大体こんなもの)
男(少しずつ、少しずつ、人の恐怖を駆り立てるように近づいてくるドッペルゲンガーの話は、実話として語られるものの中には、ない)
男(ところで皆さんは知っているだろうか、『メリーさんの電話』という、これまた有名な都市伝説のことを)
男(俺は昨日初めて知った、そして驚いた。俺が経験しているこの現象は、どちらかというとその『メリーさんの電話』に近いのだ)