男(俺と、”俺”……)
男(どっちが消えても、おそらくは大差のないことなんだろう)
男(分身だろうが、そいつは俺の形をしている以上、俺であることに代わりはないのだから)
男(……それでも、それだとしても)
男(俺は”俺”を認めない)
男(俺の姿形をして、俺と同じ声をして、俺と同じ思想を持っているとしても)
男(後輩が先輩と、白衣が男と、部長が男君と、妹がお兄ちゃんと)
男(……そして、女が恋人と呼んでくれている存在は、紛れもない俺自身なんだから)
男(奪われて、たまるか)
《土曜日》
【家】
男「行ってきまーす」
妹「いってらっしゃーい」
男「お前は休みでいいな」
妹「私はまだ中学生だからねー」
男「受験あんだろ。勉強しろよ」
妹「あーあー聞こえなーい」
男「こいつ……」