顔は下を向き、定期的に船を漕いでいる。
つまり早い話が。
「寝てるし」
おいおい、そりゃないよと、全身の力が一気に抜ける。
そこを見逃す柔道部員ではなく。
僕がやばいと思った瞬間にはもう遅く、視界が反転していた。
そのまま畳に叩きつけられる。
「一本!」と体育教師の声が響いた。
あ~やっぱりなとギャラリーが教室に帰るために立ち上がる。
畳から起き上がれない僕は心身共に疲れ果てていた。
みんなが挌技室から出て行く中
仰向けで倒れている僕に体育教師が近づいていた。
「まぁ、負けたがなかなかいい攻めだったな
少し評定上げてやる」
ありがとうございます、と息切れ切れに言った。
浩平が行かないのか?と聞いてきたが
もう少し休んでから行くと伝え僕は目を閉じた。
そして、誰もいなくなったのを確認し、
静かになった挌技室に聞こえる
寝息を立てている娘の元へ向かう。
「お~いメリーさん?」
反応は無く規則的に寝息を立て続ける。
肩に手を置き揺さぶって見たがやはり反応なし。
昨日もそうだったがどうもこの娘は一度寝たら
なかなか起きないらしい。
もっと激しく起こそうかとほっぺに手を伸ばしかけたが