そのことは当の本人が一番良く分かっているはず。
いや、分かっているからこそやめられないのだろうか。
どんなに理不尽な償いも受け入れる、僕はのび太君にそう言い、自分でもさっき同じことを言った。
今ここで僕がのび太君をとめたらその償いはどうやって果たすのだろう。
だから、僕が今するのはとめることじゃない。
押すんだ、のび太君の背中を。
今にも逃げ出しそうなその背中を、僕が。
ドラえもん「……のび太君、これ」
のび太「何?」
ドラえもん「この箱はね、開ければのび太君にとって必要なものが一つだけでてくるんだ」
ドラえもん「じゃあ僕はちょっと町を散歩に行ってくるね」
ドラえもんが渡してくれたこの箱。
曰く僕に必要なものが一つだけ出てくるという。
必要なもの、今の僕に。
そんなものあるのだろうか。
自分の親を手にかけ、友達もみんないなくなった。
こんな僕に、今更必要なものなんてない。
……研究に戻ろう。
自分だって分かってるさ。
この研究は成功しない。
例え成功しようともドラえもんはそれを全力で阻止するはずだ。