先輩「本当に?」
少女「だって……先輩とデートなんて……光栄というか……」
先輩「でも……全然、楽しそうじゃないよね?」
少女「いえ!楽しいです!」
先輩「どうして俺とデートしようって思ったの?」
少女「え、それは……」
先輩「どうせ、あの子に無理矢理なんだろ?」
少女「……」
先輩「はぁ……そういうの迷惑なんだけどな」
少女「すいません」
先輩「もういいよ。―――帰る」
少女「あ……」
先輩「まだ何か飲むなら、奢るけど?」
少女「いえ……」
先輩「あっそ。じゃあ、また明日。部活で」
少女「は、い……」
先輩「……ふん」
少女(私って……本当にだめだな……)
―――駅前 バス停
男「えっと……帰りのバスは……うへぇ……・1時間以上もあるな」
男(まあ、しょうがないか……休憩時間が大幅に減ったしな)
男「あー!!もうなんか、どうでもよくなったぁ!!」
男(本当に……どうでもいい……)
先輩「……帰りのバスは……あと10分か」
男(あ……こいつ……は!?)
先輩「丁度いいな」
男(なんであの子と一緒じゃないんだ……!?)
男(この野郎……って、今日はもうデートが終わりってだけだろうな……)
男(デートしたことないからわかんねーや、あははははは)
男「はぁ……」
先輩「―――何か、飲みます?」
男「え?」
先輩「コーヒー飲み損なってたでしょ?実は見てました」
先輩「すいません。奢って頂いて。頂きます」
男「どーぞ」
先輩「……失礼ですけど。あの子とお知り合い、ですか?」
男「え?い、いや……別に」
先輩「でも、貴方を見たとたんに店を出たいって言いだしたんですよ」
男「そうなのか……偶然じゃないか?」
先輩「で、貴方が出た後に彼女は諦観した……まるで浮気現場を見られたかのように」
男「だから……他にも客はいただろう」
先輩「でも、あの子の視線は貴方しか見てなかった。俺には一切、向けてくれなかったんです」
男「そんなバカな……」
先輩「本当ですよ」
男「……」
先輩「きっと貴方のことが好きなんですね。彼女は」
男「そんなわけない。俺と彼女は……毎朝、バス停で会うだけで……なにもない」
先輩「会うだけ?へえ……そうですか」
男「な、なんだ?」
先輩「会うだけ……毎朝会うだけ……」
男「そうだ」
先輩「それがどれだけ俺にとって羨ましいかわかりますか?」
男「え……?」
先輩「……ずっと、期待してた」
男「お、い……」
先輩「いつかデートできたらいいなって……ずっと……」
男「……」
先輩「俺、貴方のこと大嫌いです」
男「な!?」
先輩「すいません。初対面なのに。でも、今、俺は凄く怒ってますから」
男「君は……もしかして……」
先輩「1時間と言わず、彼女がここにくるまで何時間でも待っていてください。―――絶対に彼女を泣かせるな」
男「君……」