男「もう駅弁食べる?」
後輩女「どうしましょう? 時間的にはいつもより早いですけど、お腹空いてます?」
男「少しくらいは。じゃあ話しながらつまむくらいで良いか」
後輩女「そうですね。じゃあお弁当を広げましょう」ガサガサ
男「『牛肉弁当』か……一人暮らしじゃ牛肉なんて高くて買わないよ」
後輩女「こういう時くらいは贅沢にいくべきです」
男「俺のお弁当なのに完全に君の好みで選ばれたけどね。『男先輩はこれにするべきです』って」
後輩女「今度ものまねしたらその口を塞ぎますね。わたしは『30品目バランス弁当』です。やっぱり健康が一番ですから」
男「結構色々入ってるね。和食料理を得意とする身としては、こういうお弁当とかは参考にするの?」
後輩女「いいえ、こういうものは冷めた状態のお弁当で食べるからおいしいのです。そういう作り方がされているようですよ」
男「あぁ、聞いたことあるよ。じゃあ温かいとおいしくないのか……?」
後輩女「冷めてもおいしいのなら温かくてもおいしいのでは?」
男「うーん、わからんな」
後輩女「温かい状態を食べられませんからね……いただきます」
男「電子レンジも無いからな。温めるのは無理か。頂きます」
後輩女「牛肉一枚頂きますね」
男「いきなりこっちの弁当からかい……」
後輩女「味は濃い目です……おいしいですよ」モグモグ
男「そうですか……」
後輩女「うわぁ、東北はやっぱり寒いです」
男「耳が取れそうだ……」
後輩女「生産拠点までタクシーですよね……あれ、一台もいないですよ」
男「おわぁ……そんな時もあるか。すぐ来るだろうから待合室で少し待とう」
後輩女「はい。おみやげでも眺めてましょう」
男「おみやげね。帰りにずんだ餅でも買って帰ろうかな」
後輩女「ご家族にですか?」
男「あぁ。でも誰も食べなさそうだ」
後輩女「男先輩って、ご兄弟は?」
男「妹がいるよ。君より一つ上かな? 君は?」
後輩女「わたし、一人っ子なんです」
男「そっか。じゃあおみやげはご両親とお友達に?」
後輩女「そうですね。それから同期の女の子にも」
男「あぁ、いつものあの子ね。あの子さ、君をお昼に誘いに来る度に俺を睨んでくるような気がするんだけど、気のせいかな?」
後輩女「気のせいだと思いますよ?」
男「そうか。あんまり話したこと無いけど嫌われてるような感じがあるんだよね」
後輩女(まったく……どうしてあの子は余計な心配を……)
男「機会があったら訊いてみてくれる? 毎回ちょっと気になってて」
後輩女「大丈夫です。わたしから言っておきます。あの子のことは気にしないでください」
男「あぁ、頼むよ」
男「羽は新しいですけど、動きに違いは無さそうですね」
Iマネ「でも明らかに歩留まりは良好です。目に見えない部分で違いが出てますよ」
男「そうですね、原料も飛んでませんし、作業スピードも良さそうに見えます」
Iマネ「やはり経年で羽の鋭さが鈍っていたんですね。動かしているうちに原料を粉砕する部分が平たくなるので、その影響でナベから弾かれて
しまうものが多くなるのかと思います」
男「や、その通りでしょうね。これであればナベの形状を変えずにいけそうでしょうね」
Iマネ「そんな話もあったんですか?」
男「まだ議題には挙げていないらしいです。ナベの上の縁にフタのようにかぶせるものを置こうとしていたみたいで。でもこの結果を報告して
もらえばその必要も無さそうですよ」
Iマネ「いやいや……またラインが止まるのは勘弁ですよ」
男「私も一関は止めたくないです。再稼動の度にチェックに出向かなくてはなりませんから」
Iマネ「はははっ、出張は面倒ですか」
男「Iマネも月一のミーティングで東京に来ているからわかるでしょうけど、新幹線も結構しんどいですよね」
Iマネ「いや確かに。しかし私は他の拠点のマネージャーと違って前日にホテルに泊まれますから。夕方に東京に着いて少し観光したり」
男「へぇ、余裕ですね。一関は他と比べてもしっかりしてますからね」
後輩女「男先輩、チェック中です」
男「はいすみません。じゃあここはこのまま回しておいてください。他の部分をちょろちょろ見て回ります」
Iマネ「わかりました。何かありましたら、お願いします」