【※感動注意※】しんのすけとシロが家出・・・しんのすけ「シロ!家出するゾ!」シロ「クゥーン……」

顔を見合わせたひろしさん達は、もう一度深く頭を下げお礼を言い、しんちゃん達と家に入って行った。

「……坊主!親御さんを大事にしろよ!」

「ほほーい!」

手を振ったしんちゃんは、家の中に入って行った。
そして家の電気は灯される。きっとこれから、じっくり説教されるだろうな。
僕も自分の家に向かって行く。

――その時、ふと後ろを振り返ると、そこには誰もいなくなっていた。

(……あれ?お爺さんとお婆さんは?)

二人の姿と車は、忽然と姿を消していた。
まるで、初めからそこには誰もいなかったかのように……

――それから、少し奇妙なことが分かった。

僕としんちゃんは家を出て、何日かお爺さんの家でお世話になったはずだった。
でも、ひろしさんやみさえさんが言うには、僕としんちゃんが家に帰ったのは、家を出た次の日のことだったらしい。
そしてお爺さんがかけてきた電話番号は、何度かけ直しても使用されていないものだった。

さらに奇妙なこともあった。
お爺さんの電話番号の市外局番、僕らの記憶を頼りに、一度改めて家族全員でお爺さんにお礼を言いに行った。
……しかし、僕らが泊まっていたはずの集落は、どこにもなかった。
僕が匂いで案内した先は、古びた神社があるだけだった。
でも間違いない。僕が嗅いでいた匂いは、間違いなくそこの匂いだった。

ひろしさんは近くの家に話を聞いた。
地元の人によると、その神社は人繋ぎの神様が祀られているところだそうだ。

結局、お爺さん達の家は分からずに終わった。いや、お爺さんだけじゃない。僕らが見たあの集落自体が、まるで最初からなかったように、誰も知らなかった。

僕としんちゃんが経験したあの出来事は、全て幻だったんじゃないだろうか。
きっと神様が、バラバラになりかけたしんちゃん達を、もう一度繋いでくれたんじゃないだろうか……
だとしたら、香澄さんは何だったのだろうか。あの家族は、いったいなんだったのだろうか。

……もしかしたら、あの場所で、それは実際にあったことなのかもしれない。そしてその出来事が、人繋ぎの神様として祀られる要因になったのかもしれない。
詳しい資料がない以上、それはあくまでも予想でしかないが……

……こうして、僕としんちゃんの不思議な出来事は終わった。

「――こら!しんのすけ!!」

「ほほーい!」

あの日から数週間が経過した。
しんちゃんは相変わらずイタズラをしてみさえさんに追いかけられていた。
これまでと変わらない日常。だけど、とても幸せな日々。
あの日から、しんちゃんはどれだけ怒られても、家出をすることはなかった。
そして心なしか、時折ひろしさんやみさえさんを労う場面も増えていた。

……もしかしたら、しんちゃんはお爺さんや香澄さんの言葉を覚えているのかもしれない。
彼の中で、あの出来事は大きな意味があったのだろう。
それはきっと、大人になっても忘れることはないと思う。
家族を思う心、大切さ……しんちゃんは、きっとそれを強く認識できたと思う。
これから先、どれだけの間しんちゃん達が一緒にいるかは分からない。

だけど、きっと彼なら、家族を思うことが出来るはずだ。
だって彼の周りには、こんなにも彼を思う人で溢れているのだから。

「――シロ!散歩に行くぞ!」

▼ 続きは次のページにて♪ ▼
前のページへ 次のページへ