「俺達が、どれだけ心配したと思ってるんだ!
いきなり家からいなくなって!手掛かりもなくて!どんな思いで探し回ったか分かってるのかよ!!
事件に巻き込まれたんじゃないか……事故に遭ったんじゃないか……どれだけ不安だったか……お前分かってるのか!?」
「……」
「ホントにお前は、バカ野郎だよ!!この……!!」
そしてひろしさんは、再び手を振り上げた。
「――ッ」
しんちゃんは咄嗟に目を瞑り体を硬直させた。
……でも、ひろしさんの手は振り下ろされることはなかった。
気が付けば、ひろしさんの両手は優しくしんちゃんの体を包み込んでいた。
「……この、バカ野郎……。無事で……無事で良かった……本当に良かった……」
ひろしさんはしゃがみ込み、しんちゃんの肩に顔を埋める。
体と声は震えていた。小さな体を包む手は、とても強く、でも優しく握られていた。まるで、もう二度と離さないかのように。
「………」
大きな腕に包まれたしんちゃんは、目一杯に涙を溜めながら閉じた口を震えさせる。
「……しんのすけ……」
ひろしさんの横から、みさえさんもしんちゃんの体に寄り添うように彼を抱き込んだ。
ひまわりちゃんは声を出して泣いていた。
「……ごめんなさい……ごめんなさい……!」
優しい涙に包まれた彼は、泣き叫んでいた。その姿は、普段見ることのない、本当の意味での子供だったように思えた。
お爺さんとお婆さんが見守る中、光を受けた4人は泣き続けた。
でもそこに悲しい匂いはない。とても、暖かくて優しい匂いだった。
「――本当に、ありがとうございました……」
ひろしさんは、深々とお爺さん達に頭を下げた。
「いやいや、いいんよ。無事に坊主を送り帰すことが出来て、こっちは満足しとる」
「そうそう。それだけでいいんですよ」
お爺さん達は、笑顔で言葉を返す。
そして……
「……では、そろそろ帰らせてもらおうかな。家を長く空けるわけにはいかないし……」
「そんな……こんな遅くまで運転して、疲れているでしょう。今日はうちで休んで行ってください」
みさえさんは、お爺さん達を引き留めようとしていた。
しかしお爺さんは、頷くことはなかった。
「お気持ちだけでけっこうですよ。それより、早く坊主を家に入れてやってください。ほら、早く」
「え、ええ……」