しばらくは、手元に残ってた本の中でも一番難解な
「フィネガンズ・ウェイク」を読んで格好つけてた。
当然、内容はさっぱり頭に入ってこなかった。
余命三ヶ月だってのに、何をやってるんだろな。
読書に飽きた俺は近所のスーパーに行って、
グラス付きのウイスキーと氷を買った。
ミヤギも菓子パンやら何やらを買いこんでた。
それを見た俺は、なんか幸せな錯覚に陥ってさ。
実を言うと、俺には昔から憧れがあったんだよ。
同居してる子と部屋着のままスーパーに行って、
食材とかお酒を買って帰ってくる、って行為に。
羨ましいなー、って思いながらいつも見てた。
だから、たとえ監視が目的だろうと、若い女の子と
夜中のスーパーで買物するってのは楽しかったんだ。
むなしい幸せだろ? でも本当だから仕方ない。