だが結局、俺はそのビルに向かうことになった。
CDも本も家具も、まったく金にならなかったからだ。
寿命を売るなんて話を信じたわけじゃない。
しかし、俺はこういう可能性を考えたんだよ。
爺さんや兄ちゃんが言っていたことは何かの比喩で、
実はものすごく割のいいバイトがあるんじゃないかって。
寿命を縮めるようなリスクを負う代わりに、
一か月で百万くらい稼げたりするとか、そういうの。
ところが、うす暗い階段を上がってドアを開け、
目が合った店員らしき女が、俺の顔を見るなり
「時間ですか? 健康ですか? 寿命ですか?」
なんて言ってくるもんだから、笑っちゃうよな。