のび太「太陽の位置……ひょっとすると……もう既に昼を過ぎているのか……?」
―――少女の魔法が放たれる直前、のび太が服用した二つの錠剤のような物…
そのひとつが『うらめしドロップ』である
これを飲み、眠りにつくと一時的に魂が体を離れ幽霊になることができる
のび太はうらめしドロップを服用し
魂を肉体から離すことで死の魔法を避けたのである
※ちなみに『うらめしドロップ』は服用後、眠らないと効果が発動しないが
のび太は0.93秒で眠りにつくことが可能
……だが、少女の使う魔法が『全く傷つけずに対象を死に至らしめる』魔法でなければ
この作戦は成功しなかったと言える
もし魔法が『外傷的なもの』であれば
肉体はズタボロにされ、幽体から戻った時点でのび太は死んでいたであろう
のび太は何故そんな危険な賭けを実行に移せたのか…
その答えは 服用したもうひとつの道具にあった
のび太「今から三時間………僕は信じられないような幸運に見舞われる……!」
のび太「この『ツキの月』…最後の一粒が残ってただけでも幸運なくらいだ…!」
『ツキの月』を飲むと三時間だけ幸運を呼び寄せる…
つまり、のび太はこの道具を服用する事により先程の魔法を凌ぎ
尚且つ『運任せ』とも言える無謀な罠を強制的に発動させようと試みたのである
のび太〈僕にとって幸運が訪れるとすれば『今日中にドラえもんとの決着がつく事』、それだけは間違い無い筈!〉
のび太〈それでも『運』が向かないのなら仕方が無い…またみんなと作戦を練り直すだけ……〉
時刻は午後3時を回ろうとしていた……―――
―――『ツキの月』を服用してから、待つこと約2時間…
半分諦めかけていたその時である…!
町で時間を潰していたのび太に緊迫した空気が纏わりついてきた…!
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のび太〈ドラえもんの奴…とうとう罠に引っかかった!〉
のび太「あっちから感じるぞ…!この異様な感じは……間違いない!」
のび太は街の本道を抜け、住宅街へと駆け出す
道行く人の影が落ち 町が徐々に色を付け始める頃
街角から流れるラジオが時刻を告げた…
「ピッ…ピッ…ピッ…ポーン……」
「―――さぁ17時を回りましたミュージックチャンネル。7月23日現在のヒットチャートをお送り致します…」
のび太「――――――行き止まりッ!!?」
のび太〈参ったな…ここら辺の地理はあまり詳しくない…回り込んでる時間は無いぞ……!〉
のび太〈ドラえもんは明日まで『魔法事典』を持っているんだ…『ツキの月』の強運が味方をしているうちに対峙しないと…!〉
のび太「……回り道して時間を食うより……多少目立っても確実に近づいた方がマシだ…!」
のび太はタケコプターを取り出し
空を進んだ…
のび太「あまり上昇するとかえって危険だな……屋根に隠れる様に進まなければ……!」
前方の屋根にのび太が足をつけようとしたその時――――――
突如、銃弾のようなものが、のび太の肩をかすめた…!!
のび太「うわっ!!こ、この攻撃はッ!!?」
飛行機の漏れたエンジンが引火していく様に
傷口から赤々しい血液が飛散し墜落していく
のび太〈下に……誰かいる……ッ!!〉
下に居る男が再び目に見えぬ攻撃を繰り出す…!
のび太は思わぬ不意打ちに体勢を崩し尻餅をついた
のび太〈くそっ……こんな時に……ッ!!〉
大男「……そろそろのび太が来る頃だと思ってたぞ」
のび太が崩れた体勢から大男を見上げると
ジャケットに張られている『准士官』のワッペンが
夕日に照らされギラリと輝いていた
准士官「お前が今にボスの居場所を把握しようとしてるって『中将』が言うんでな」
のび太「…ドラえもんのやつ…自分の位置が割れている事に気がついてないのか…」
准士官「そぉいう事よ。上がボスに連絡を取ろうと躍起になってる間、俺達下っ端は道中見つけ次第足止め役ってわけだ」
のび太「大した統率力だよ…君達のボスはワッペン以外にも何か道具を使って従えてさせているようだね…」
准士官「さぁ…どうだったかな…」
のび太〈この忠誠と統率……『桃太郎印のきび団子』を使っていてもおかしくない……!〉
准士官「お前は中々の策士だと聞いてるが……まさか仲間を連れてくるとは…」
のび太「仲間?」
のび太は後ろに振り返った
次の瞬間、ナイフのように鋭い衝撃波が胴体を貫き、のび太を壁に叩き付けた!!
のび太「ガハッ!?」
准士官「おいおい……策士って情報は何かの間違いか?」
のび太〈き……気のせいか……後ろで気配がしたんだけど……!〉
のび太〈……い、いや……そんな事よりもだ………こいつのこの攻撃は……!〉
准士官は先端にスペースシャトルの付いたストローを咥えていた
※ロケットストロー
吹くと勢い良く空気を噴射する。下に向けて吹けば空を飛ぶことも可能