ここらへんの会話はあまり覚えてない。
 ただ、先輩のリアクションがかなり派手だった。
 「え? 本当にあのバイトあるの?」からはじまり、
 けっこう根掘り葉掘り聞かれた。
「ウソをつくか。だますのかわからんけど、そんな感じのことをすりゃあいいわけだ」
 先輩は俺とちがって、勉強ができる人なんだわ。
 俺の話しを聞くと、しばらく黙って考え出した。
けど、この時点では先輩はなんの提案もしなかった。
「もしまたなにかあったら、オレに言えよ」
「万が一なんかやばいことがあったら、オレに相談しろよ」
 妙にニヤニヤしながら、そんなことを言った。
 先輩がこういう顔をするときは、たいていろくでもないことを考えてるときだわ。
「なんなら、先輩もやればいいじゃないですか」
という俺の提案には「んー、考えておくわ」としか答えてくれなかった。
そのあと、俺は教室にもどってクラスメイトのクロダにウソをついてみることにした。
