男(…………そう、アウト)
男(見つかれば、命はない)
男「…………ぅっ……」
男(吐き気を、催す)
男(今まで……ごく普通の人生を歩んできた俺には、当然命を賭けることなど、経験したこともない)
男(脳が、体が、拒絶する。手足が震える。手から、脇から、背中から、とめどなく汗が溢れ出てくる)
男(………こええ)
男(こええ、こええよ。何なんだよこれ。俺が何をしたってんだよ。何で俺がこんな目に遭わなきゃなんねぇんだ。ふざけんな)
男「……クソッタレが……」ドンッ!!
男(だけど、いくら壁に八つ当たりをかましたところで状況が変わるわけでもなく)
男「…………くっ……そ………」ポロポロ
男(一人……恐怖に心を蝕ませていくのみ)
男(人は、こんなにも孤独だ)
《木曜日》
【家】
男「……………」
男(昨日は、部活をサボった)
男(部長や後輩からはLINEが来てたが、全部未読スルーだ)
男(せめて女には心配かけまいと、なんとかLINEでたわいもない話をしたが……)
男「……逆に心配かけてねぇといいな」
男(支度をして、学校へ行く)
男(昨日はつい考えすぎて取り乱してしまったが、まだこの現象がオカルトのものだと決まったわけではない)
男(今日……なんの目撃情報もなければ、恐らくは)
男(安心できるのだろうから……)