魔人「まぁ生み出さなくてもかき集めることだって出来ますけど、それでもオススメはしませんね。人間、突然金持ちになったらおかしくなってしまうもんです」
男「俺は大丈夫だから! 俺は優しい億万長者になるから!」
彼女「目が¥になってんのによく言う……」
魔人「前のご主人様も最初の内は貧乏な心優しい青年だったのに……。絶対に許しません……」
彼女「まぁ借金返す分くらいは貰ってもいいんじゃない?」
魔人「それなら全然オッケーですよ。いくら返さなきゃなんないんです?」
男「1千万!」
彼女「何嘘ついてんだ」ゴチン
魔人「さっき7万払うために借りたって言ってたじゃないですか……」
彼女「10万5千返さなきゃなんないんだって」
男「うわああ! 何ホントのこと言ってんだ君!」
魔人「10万5千円ですね。お安い御用です」ポンッ
男「そんな!」
彼女「良かったじゃん。これで借金返せるし」
男「いいもんか! これじゃ手元に何も残らないだろ! お金さえあればスーパーカーだって豪邸だって何だって買えるんだぞ!」
彼女「お金なんかなくったって幸せになれるって」
男「お金がなくちゃ、一生遊んで暮らせないだろ!」
魔人「そんな事言ってる人にお金なんか出しませんよ」
彼女「それにどうせうちの店継がなきゃなんないんだから」アハハ
男「やだよ! 寿司屋なんて御免だよ!」
彼女「私はね、貧乏でもいいから二人で店を継いで、子どもを産んで、温かい家庭を作れたらそれでいい。それが私のささやかな夢」
魔人「いいですね、その等身大の幸せ! 喜んで協力しますよ!」
男「……じゃあ金以外だったら何叶えてくれるってんだい」ブスッ
魔人「前のご主人様はお金で買えないものをご所望でしたね。心優しい美人な奥さんが欲しいとか。あのお願いは結構苦労しましたよ」ハハハ
男「ほう……///」
彼女「なに鼻の下伸ばしてんだアンタ。私がいるから関係ないでしょうが」ギュウウ
男「痛い痛い! まだ何も言ってない! 俺の夢はもっと壮大! 現代の大奥を作り出すんだ!」
彼女「すいません、この馬鹿をもうちょっと賢くしてあげて」
魔人「かしこまりました」ソレッ
男「ああ! そんなこと頼んでないのに! 大変遺憾だ!」
彼女「あ、ちょっと賢くなってる」
魔人「これで二つ叶えましたね。あと一つはどうします?」
男「え、あと一つだけ?!」
魔人「はい、三つまでですので」
男「うーん、あと一つだけかと思うと下手なお願いはできないぞ……」
彼女「必要に迫られるまでとっておいたら? もしかしたら私が交通事故に遭うかもしれないし」
男「なるほど、そうなってからハーレムのお願いをしろと?」
彼女「すいません、まだちょっと賢さが足らなかったみたいだから、せめて一般人くらいの知能指数にしてもらえる?」ゴチンゴチン
男「痛い痛い! そんなに頭殴ったら馬鹿になる!」
魔人「だ、大丈夫ですよ、二つ目のお願いはじわじわと効いてきますから……。だからもっと別のお願いの方が……」
彼女「まぁとっておいたとしても、その後もっと窮地に立たされるかもしれないと思えば結局使えなくなるしね……。私が死んだ後でハーレム作られるくらいなら、今使っちゃった方がいいのかも」
男「しかし金もダメ、女もダメとなれば何も思いつかないな」
彼女「アンタの頭のなかは金と女しかないのか」
魔人「あとは地位とか名声ですかね。名声が欲しければ巨大隕石を落下させて、命と引き換えに地球を救うみたいなのもできますけど」
彼女「なにソレ、泣ける」
男「どこのアルマゲドンだよ! そもそも地位も名声も興味ない!」
魔人「じゃあ今起こってるささやかな問題を解決しちゃいますか。何か困ってることはないんですか?」
男「いや、特には……」
彼女「あ、一つあった!」
男「へ?」
***