一応カメラは持っていったけど
写真なんてほとんど撮らずに
ゲーセンで遊んだり
ファーストフードで
ハンバーガー食べたりしたなあ。
そういえば俺の写真が
一度だけ何かのコンテストで
佳作に選ばれたことがあったんだ。
彼女も凄く喜んでくれたっけ…
思わず抱き合って喜んでたら
彼女がキスしてくれた…
ほっぺただったけど。
俺も「お返し」とか言って
キスしたような気もする。
ほっぺだったのか唇だったのかは
残念ながら思い出せない。
いや、
これはただの妄想かもしれない。
冬休みの間も「部活だ!」と言って
彼女を連れ出して初詣に行った。
人混みの中で
はぐれちゃいけないとか理由をつけて
手を繋いだりしたよ。
厨二病全開だったし。
普通に手を繋いだハズなのに
途中からは指を絡める形に
変わったような気もする。
その時、俯きながら
頬を赤く染めた彼女が、
つま先で俺の足をツンツンと
蹴ってきたのが
めちゃめちゃかわいかったとか…
もうね、
信じられないくらい充実した日々…
今との違い半端ナシ。
そんな楽しかった日常が突然終了した。
それが俺の不登校の原因。
引き篭もりの始まり。
1月の土曜日だったと思う。
いつものように撮った写真を
部室で現像処理してた時。
(えーっと、
会話はまったく覚えてないんで
適当に補完処理します)
彼女「先輩はポートレートは撮らないんですか?」
俺 「撮りたいとは思うけどモデルいないしさ」
彼女「だったら……私を撮ってください。
その代わり先輩もモデルになって下さいね」
そんな感じでお互い写真を
撮り合うことになったように思う。
これがカプセルに入ってた写真。
撮影場所は学校の裏を
少し登ったところにある小さな公園。
街のほぼ全部が見渡せる場所。
テンパった俺は部室にあった
ありったけのレフ板や三脚を持って
必死で登ったような気がするが
アシスタントなしでどうやって
それを使うつもりだったんだろう?
当時の俺に会えたら聞いてみたいと思う。
事前にロケハンしていたのか
公園に着くといい具合に光の廻った
ポイントに立つ彼女。
長い髪から透ける傾いた夕陽が
キラキラしててさ、
夢中でシャッターを押してたら
あっという間にフィルム3本。
モードラなしで3本は
結構撮り応えあるぞ。
ここで攻守交替。
緊張して仁王立ちの俺に
苦笑いの彼女。
そして何枚か撮った後で
彼女が一緒に写ろうと言い出して
撮ったのが腕を組んだ
このツーショット写真だと思う。
カメラを三脚に固定して
最初は普通に二人並んで撮ったんだけど、
もう少し撮っておこうと
シャッターをチャージして戻ってきた
俺の腕に彼女が自分の腕を
突然絡めてきたのがカプセルの写真。
驚いたのなんのってもうね。
この時の俺はたぶん
相当舞い上がってたと思う。
そんな感じで盛り上がってたんだけど
冬だから日没が早くて、
この時点でもう暗くなり始めてた。
早く部室に戻って
片付けをして帰らなきゃと思って
俺 「遅くなったから現像は来週にしようか。
もう下校時間だし」
彼女「それ、ダメなんです……」
俺 「なんで? 試験はまだ先だし大丈夫でしょ?」
彼女「私……明日、引っ越すんです……」
俺 「 」
この時の俺のダメージは極めて甚大。
テンションが上がるだけ上がってたから
落差が 激しく血圧の急変動で倒れそうだったし。
まさに血の気が引くってやつ。
唇が急に冷たくなっていった感覚が蘇る。
ここから先は何が何だかわからない状態で、
とりあえず現像とプリントを急いだんだ。
なんとしてもその日じゅうに
写真を彼女に渡さなきゃとか思ったから。
今から考えると、
もっと大事なことがあったような
気がするんだけど。
下校時間はとっくに過ぎてるのに
部室の鍵を返してないから
校内に残ってるのはバレバレ、
顧問が突入してきたら
その時点でゲームオーバー。
だから二人とも必死になって
作業をしたんだ。