写真やネガは全て焼却、
カメラやレンズは婆ちゃんに頼んで売却。
カメラは爺ちゃんの形見だったけど
婆ちゃんは何も言わずに処分してくれた。
ごめんよ婆ちゃん。
そんなわけで形のあるモノは
何一つ残ってないハズだった。
記憶も封印したから
二度と思い出すことのない
思い出だったんだけど…
ところが3枚の写真がこうして
俺の手元に戻ってきた。
部室に放置されていたものを
顧問が見つけて俺の代わりに
カプセルに入れてくれたから。
丁寧な手紙を添えて。
そのおかげで大事な思い出が
蘇ったということ。
高校入学以降、
彼女のことを必死で
思い出さないようにしていたせいで
今の今まで本当に忘れてしまっていたんだ。
だから当然約束の日に
約束の場所になんか行ってない…
完全に消えてたし。
今から思えば10年なんてあっという間だし
拗ねたりせずにちゃんと
覚えてればよかったと後悔。
というより、
引越し先の住所くらい聞いておけば
よかったんじゃね?
と激しく後悔。
まさに後悔先に立たず…
その辺りまで思い出したところで
手紙が2通だったことに気づいた。
小さい方の封筒。
女子が好んで使いそうなレターセットだ。
ひょっとしてこれは…
「先輩さんへ
ちょっと早いけど
バレンタインのチョコです。
ちゃんとバレンタインの日に
渡したかったんですが、
できなくてごめんなさい。
先輩と一緒に部活ができて
楽しかったです。
いろんなところに連れて行って
くれて ありがとうございました。
私は先輩が大好きです。
新しい住所は_________です。
連絡もらえると嬉しいです。
後輩より」
チョコと一緒に入ってたと
思われる手紙でした。
当時の俺がこれを読んでいたら
不登校にならずにすんだかもしれない。
手紙のやり取りをしてれば
そのうち携帯やメールで頻繁に
連絡ができるようになったのかもしれない。
俺は千載一遇のチャンスを
放置したようでした…
無念です。
俺はすぐにその住所に
手紙を出してみたんですが、
宛先不明で戻ってきました。
そして去年。
たまたま出張で
こっち方面に来ることになった。
期間が2週間もあったから
ホテルを取らずに婆ちゃん家から
通うことにした。
その方が落ち着くし
会社も経費が削減できる。