それに婆ちゃんも喜ぶし。
ちょうどホワイトデーが
出張中に重なるという偶然。
これも運命か?
その日は仕事が早めに終わった。
というか出張中は早めに終わることが多い。
くだらん夜の長時間会議とかないから。
婆ちゃん家へ帰ろうと
車で走ってた時にラジオから
昔の曲が流れてきた。
ああいうのって当時を思い出す。
特に運転中とか頭の中で
イロイロ呟いたりしてるから。
時計を見るとちょうどいい時間だし
何となく学校のあった場所、
公園の方へ向かってみようとか思った次第。
土地勘はあるんで道に迷うことはない。
そうやって
公園に来てみたけど駐車場は空。
ということは誰もいないってこと。
暦は春だけど実際は
冬の最中に名所でもなんでもない
こんな辺鄙なところへ来る奴なんて
犬の散歩にくる近所の奴くらいか。
犬の散歩だとしても寒過ぎだろ?
とか考えながら車を降りて
撮影ポイントへ向かう俺。
いったい何を期待してるのやら。
すんげー寒いの。
街が見渡せるということは
吹きさらしになってるということ。
こんなところに10分もいたら
確実に風邪をひくと思う。
やっぱり誰もいないじゃん。
それだけ確認すると
急いで車に戻る俺。
さっさと帰ろうと思って
エンジンを掛けたところで携帯が鳴る。
会社からだ。
ものわかりの悪いやつだったから
時間がかかってしまい
気づいたら30分くらい話してた。
ちょっとイライラしながら
車を動かそうとライトを点けたら
駐車場の端にタクシーが 止まってる。
ん?
さっきまで居なかったよな?
おや?
タクシーに向かって
小走りに走る人影?
思わずクラクションを鳴らしてみると
人影が立ち止まって
こちらを凝視してる…
コートを着たシルエットだから
男女の区別がつかない。
俺は車のドアを開けて駐車場に出てみた。
暗がりでお互い相手を判別できないけど、
ジーっと見つめ合ってる状態。