宗介「リサ、なんだかポニョ具合悪いみたい。
寝かせてって。だから朝食いらないって」
リサ「珍しいわね…というか初めてじゃない?」
宗介「そうだね。こんなことは」
リサ「……まあ、朝食食べましょう」
宗介「うん……」ぱくぱく
リサ「……」ぱくぱく
宗介(友達としての好き)
宗介(恋人としての好き)
宗介(家族としての好き)
リサ「……」チラッ
宗介「……」
リサ「どうしたの?ボーっとしちゃって」
宗介「い、いや」
宗介「……リサ」
リサ「なあに?」
宗介「なんで…リサは耕一と結婚したの?」
リサ「ゴフッ」ゲホッゲホッ
宗介「……ごめん」
リサ「朝からヘビーなこと聞くね~」
宗介「ごめん」
リサ「結婚したのは好きだったからよ」
宗介「だよね」
リサ「でも大人になると若いときのようにはいかないものなの。
耕一はなかなか帰ってこなくなるし、私も仕事が忙しくなった」
宗介「うん……」
リサ「私は不安だったし、耕一もきっと不安だったわ。
だから…初めてポニョに会ったとき、私のこと疑ったんじゃないかな」
宗介「浮気を?」
リサ「いろいろと」
宗介「まあ…魚が人間になりましたって言っても信じられないよね」
リサ「私だって信じられない。本当はポニョのこと、すごく怪しんでる」
宗介「えっ」
リサ「だけど宗介がそう言ったから、信じてるのよ。だって私の宗介だもの。
でも、耕一は私を信じてはくれなかった。それで……」
宗介「……ごめん」
リサ「いいの。耕一とは夫婦じゃなくなったけど、今でもお互いに好きだし幸せだわ」
宗介「好き?」
リサ「ええ。好きっていろいろあるじゃない。形はともかく私は耕一が好きよ。
耕一も私のこと好きよ。そして二人とも、宗介が好き」
宗介「……朝食おいしいね」ぱく
リサ「ふふふ」ぱくぱく
宗介「ねえ、リサ。僕、小さい頃はポニョのこと好きだと思ってた。
ポニョも僕のこと好きだって言ってくれる」
リサ「今、宗介はポニョのこと好きじゃないの?好きでしょ」
宗介「そりゃ好きさ。あんな性格だから、最近はついイライラして怒ってしまうけれど」
リサ「ならいいんじゃない?」
宗介「でも、僕の好きは小さい頃の好きとは違うよ」
リサ「そうだろうね。だって小さい子供の“好き”って本当に単純に純粋に“好き”だから。
宗介はもう高校生だから、いろいろな“好き”がわかるでしょ?
私のさっきの話も、ちゃんと理解できる」
宗介「うん……」
リサ「でも、ポニョは違うの。小さいときと変わらない。ただ宗介が好き」
宗介「だから困ってるんだ。きっとポニョは“好き”がわからないんだよ。
必ず恋人のようにならなくてもいいのに。友達とか、家族とか……。
それなら僕だってポニョが好きだ」
リサ「でもね、宗介。本当の運命のような“好き”はあんがい単純で純粋だったりするものよ。
小さい子の“好き”みたいにね」
宗介「……」
リサ「ポニョは運命だったのかも」
リサ「だから魚から人間になったんでしょ?宗介が本当に好きだから」
宗介「でも、僕はポニョのこと……」
リサ「それでもいいんじゃない?
好きにはいろいろあるし、ポニョの純粋な好きって気持ちは宗介といるだけで
満たされると思うからさ」
宗介「そんなもの?」
リサ「そんなものそんなもの。あまり難しく考えるとハゲるわよw」