俺は相変わらず残業の毎日を送っていてその日も会社を出たのは夜の11時過ぎだった。
終電の1つ前の電車に乗るのがもはや日課になりつつある。
人がポツポツとしか居ない駅のホームで電車を待つ。
―すると
ふと横から視線を感じた。
視界ギリギリのところで人の顔がチラチラ見切れる。
第六感とかではなく、完全に俺を2度見、3度見していた。
俺はチラ見する人に視線を移した。
視線を送っていたのは女性…。
…
あ…。
本来であれば他人と偶然にも目が合ってしまった場合、すぐに視線を外すのだが
横にいた女性は以前、電車内でゲロった女性となんとなく雰囲気が似ていた。
ので、疑念のような視線を送ってしまった。
すると女性が
女性「あ、あの」
話しかけられた瞬間「あぁ、やっぱりあのゲロった人だ」と確信した。
実のところ逃げ出したかった。
知らんぷりをしてしまいたかった。
が、返答した。
俺 「……はい。」
女性「こ、この前、電車で………の方ですよね?」
ずいぶん省略された質問だったが、無理もない。
俺はコンマ数秒悩んでから覚悟を決め…。
俺 「あ……。はい。…もう具合、大丈夫ですか?」
あれから数日経っているのだからまだ具合が悪いわけがない。
ただ、返答としては間違っていなかったらしい。
女性「やっぱりそうですよね?!本当にご迷惑おかけしました。」ペコッ
返答一発目で物凄く丁寧に謝られ、俺は密かにホッとした。
改めて女性を見ると随分物腰の柔らかそうな人だった。