スネ夫が高速でパソコンのキーボードを叩く。
ジャイアンは念のため釣竿ケースから猟銃を取り出し、弾を込めておく。
スネ夫「きた!!この病室の外の廊下、右方向だ!」
ジャイアン「おう!」
猟銃をドアに向けて構える。入ってきたらすぐに発砲できる状態だ。
スネ夫「まだだよ、ジャイアン……壁の向こう、すぐ近くにいるけどそこで止まってるみた
いだ。ドアが開いてもすぐには撃たないでね」
ゆっくりとドアが開く。しかし、スネ夫の指示がないのでジャイアンは焦りをこらえながらじっと待つ。
スネ夫「きた!今だ!!」
ジャイアン「うおおおおおおおっ!!!」
――ドォン!!
猟銃が火を噴き、何もないはずの空間に弾があたり火花を散らした。
近くに石ころ帽子が転がり、コピーロボットが姿を現す。のび太の姿をしていた。
偽のび太「痛いじゃないか、ひどいよジャイアン」
スネ夫「!!まだ生きてる!」
ジャイアン「へっ……銃で撃たれても平気なんて、のび太のくせに生意気じゃねぇか」
偽のび太「やれるもんならやってみなよ。心の友を本気で殴れるかい?」
ジャイアン「…………」
偽のび太「無理だよね? だって僕らは心のと……がぁあ!!!」
ジャイアンの右ストレートが偽のび太の顔面にクリーンヒットする。
そのまま倒れた偽のび太に馬乗りになると、ボカボカボカボカ殴り続ける。
ジャイアン「殴れるかだとぉ? 殴れるに決まってるじゃねぇか。
のび太をいじめんのはなぁ、俺のライフワークなんだよ!!」
スネ夫(……のび太の姿してきたのは奴の最大の失敗だな)
そのとき、スネ夫は見た。
コピーロボットを殴り続けるジャイアンの背後にピンクのドアが開くのを。
スネ夫「ジャイアン!うしろ……」
黒服2「バン」
言い切るより早く男の空気ピストルが発砲された。
肩口を射抜かれてジャイアンが体勢を崩す。
ジャイアン「うがぁ!!」
スネ夫「ジャイアン!!」
黒服2「おおっと、動くなよ。俺の空気ピストルは改造してあるからな。人間を撃ち殺すこ
となんて簡単なんだよ」
スネ夫「おまえ……いったい誰なんだよ!!」
黒服1「ただの未来人さ。といってもテロリストだがな」
スネ夫「テロ……リスト?」
黒服1「そうさ。過去に逃亡したはいいが、タイム・パトロールに追って来られると面倒だ
。だからこの時代に来てタイムマシンの発明者を殺したわけさ。これで未来は変わ
り、タイムマシンの発明は遅れることになる。俺のいた時代にはタイムマシンは発
明されていないから当然タイム・パトロールもいない。もっと未来になればタイム
・パトロールも出てくるが、それ以前にタイムマシンがあったはずもないから奴ら
に俺たちの存在がばれる事はない」
スネ夫「そんな……いや、おかしい。そしたらおまえたちのいた時代にはタイムマシンはな
いわけだから、おまえたちがタイムマシンを持つことも出来ないはずじゃないか」
黒服1「普通なら、な。だが俺たちはタイムマシンの製作者を、タイムマシンに乗りながら
殺した。わかるか? つまり未来が変わったその瞬間、俺たちはタイムマシンの航
行する四次元空間にいたわけだ。未来が変わったことによる修正も、四次元空間に
は干渉できない。だから、俺たちはタイム・パラドクスの修正の影響を受けなかっ
たってわけさ」