出木杉(駄目だ……何も起こらない!やはり電話越しじゃ声が小さいんだ!)
黒服1「ふ……電話か。今のはヒヤッとしたぜ」
黒服は出木杉の腹を蹴り上げると、電話を奪った。
黒服1「骨川スネ夫くん、残念だったね。君の声は小さすぎて空気ピストルには届かなかっ
たようだよ。腹の傷が痛んで大きい声が出せなかったか?」
スネ夫『くっ……』
黒服1「さっさとここへ来い。でなきゃ大事な友達が先に死ぬことになるぜ」
出木杉(だ……めだ……失敗だった)
ジャイアン(くそ、このままじゃ……でも言えねぇ!言ったらしずかちゃんが)
しずか(お願い、わたしのことはいいから「バン」って、誰か言って!!)
スネ夫(くそ、急がなきゃ……けど、行ってどうすればいい?)
のび太(どうすればいい? どうすればいい? 助けてよ、ドラえもん……)
そのときだった。のび太の頭にひとつのアイディアが浮かんだ。
のび太(そうだ、うまくいけば……)
のび太「ねぇ、ひとつ聞いていい?」
黒服1「あ? 何だ?」
のび太「今の時間を教えてほしいんだ」
黒服1「時間だと? …………23時48分だ。それがどうした」
のび太「いや……別に。それより、あのロボットを見たかい?」
黒服1「ああ、あれか。気になってはいたんだ。22世紀のネコ型ロボットに似ている」
のび太「あれは僕が作ったんだ。そして電源は普通のスイッチじゃない」
黒服1「おまえ大丈夫か? もうすぐ俺に殺されるってのに、そんな話をしている余裕がど
こにある」
のび太「話しかけてやればいいんだ、それで起動する……」
黒服1「黙れ。死にたいのか?」
のび太「こう言うんだ……ドラえもぉぉぉん!!!!」
のび太が叫んだ。
その声に反応し、DR-1の電源がONになる。
ブゥン、という音とともにドラえもんの鼻が光り……彼はしゃべった。
DR-1「こん”バン”わ。ぼく、ドラえもん」
空塊が黒服の身体を至近距離から吹き飛ばす。
本棚に叩きつけられた黒服男はそのまま気を失った
すぐに駆けつけたスネ夫によって4人は縄を解かれた。
そして、目を覚ましかけた黒服にジャイアンが強烈なラリアットをかまし、
もう道具を持っていないことを確かめたうえでロープでぐるぐる巻きにしておいた。
出木杉「今度こそ……終わったんだね」
ジャイアン「たぶんな」
走って来たせいで手術跡が開いたのか、痛みに顔をしかめているスネ夫をしずかが気遣っている。
のび太はDR-1を眺めていた。
青い、丸い身体。また自分はドラえもんに助けてもらったのか……
のび太(いや、これはドラえもんじゃない……本当のドラえもんは、もう……)
スネ夫「みんな、ちょっとこれを見て!!」
出木杉「どうしたんだい?」
スネ夫「電波障害だ……強い電磁波も感知されている」
ジャイアン「……嘘だろ」
しずか「まさか、まだ……」
スネ夫「しかも、発生源は――ここの屋上だ」