そのころ、のび太は辟易していた。
ジャイアンがしつこく、「俺の家で飲みなおそうぜ」と誘ってくるのだ。
明日も仕事だから、と断ろうとするとすぐに
昔のガキ大将の顔を覗かせるのだから困ったものだ。
ジャイアン「いいじゃねぇか。ほら、最近いい芋焼酎仕入れたんだぜ。一緒に飲もう
じゃねぇか」
のび太「いや、今日は遠慮しとくよ」
ジャイアン「それにさ、留学していたジャイ子が今ちょうど帰ってきてるんだよ。あ
いつもおまえに会いたがってたぜ。それにな、ここだけの話あいつ昔は
おまえのこと……」
のび太「いや、遠慮しとく」
ジャイアン「それにあいつ、海外のファッションに影響されたのか最近すごくお洒落
になったんだぜ? 今日なんかすげぇミニスカートを……」
のび太「断固、遠慮しとく」
ジャイアン「しょうがねぇな、とっておきの情報教えてやるよ。俺知ってんだ。ジャ
イ子のやつ今日は安全日……」
のび太「遠 慮 し と く」
無理やりジャイアンに引っ張られ、ついに剛田商店まであと十数メーターというとこ
ろまで来てしまった。
ここまで来たらもう覚悟を決めるしかないだろう。のび太は腹をくくった。
のび太(さよなら……僕の童貞……)
そのときだった。
???「キャアアアアアアアアアアアアアッ!」
のび太「!? ジャイアン、今の悲鳴……」
ジャイアン「ジャイ子の声だ」
ジャイアンの顔が蒼白になった。
ドアをぶち破る勢いで二人が剛田商店に飛び込むと、
縛られ猿轡をされたジャイアンの母と、
わき腹を押さえてうずくまるジャイ子の姿があった。
わき腹を押える手の隙間からチが流れでいる。
ジャイアン「ジャイ子ぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
のび太「落ち着くんだジャイアン!!とにかく止血を……ぐあっ!!」