継母「ごめんなさい、シンデレラ……」
シンデレラ「いえ……あの、この三ヶ月、色々楽しかったのは……本当ですし……」
長女「このお姉ちゃんウゼーとか思っていませんこと?」
シンデレラ「そんな!! ありえません!! こんなに素敵なドレスと靴まで用意してくれたのに……」
長女「よかったですわ、マジで」
次女「それはそうとお母様。シンデレラが嫌だというなら帰りましょうか」
継母「そうですわね。でも途中棄権の罰として、シンデレラにはこのドレスを着て家で舞ってもらいましょうか」
長女「大賛成ですわっ」
三女「セリーヌも私も大歓喜です」
次女「さ、行きますわよ」
シンデレラ「あ、あの……」
長女「どうしたの?」
シンデレラ「……お、おどってみたいです……少しだけ……」
長女「いいんですの? 無理に躍らなくてもいいですのよ?」
シンデレラ「私……踊ってみたいですっ。お姉様から貰った、このドレスと靴で」
王子「楽しかったです」
「いえ……では……」タタタッ
王子「(そろそろ切り上げるか……)」
シンデレラ「えぇぇ!?」
王子「ん?」
長女「さ、やりますわよ」
次女「う、うわー、なんだ、このお姫様はぁー」
三女「まぶしすぎるぅー」
ザワザワ……
王子「(誰だ……?)」
長女「さ、躍って。今、注目の的ですわ」
シンデレラ「いや、あのペアのかたもいませんし!!」
三女「貴方にはずっと一人で踊りの練習させてきたはずですわ」
シンデレラ「は、初めから……一人で躍らせるつもりだったんですか!?」
長女「何を小生意気な!!! シンデレラ!!! 貴方が男性と踊るなんて神様が許してもお姉様が許しませんわよ!!!」
継母「お母様もゆるしません」
シンデレラ「えぇ……?」
長女「さぁ!! シンデレラ!!! 蝶のように舞いがいいですわ!!! おーほっほっほっほ!!!!」
シンデレラ「うぅ……」
シンデレラ「……はいっ」
シンデレラ「えっと……えっと……」フラフラ
長女「ふん。シンデレラのくせに……強がりなんて……」
次女「素敵……」
三女「ほぉー……」
継母「……はっ!! シンデレラですのね。アルテミスが躍っているのかと……」
「なんだ、あの踊りは……まるでなってないぞ……」
「何て無様な踊りなんですの……でも……」
シンデレラ「ほっ……おっ……」フラフラ
王子「(懸命さが痛いほど伝わってくる……。それに……美しい……)」
シンデレラ「あぁ……」フラッ
王「あの少女は?」
兵士「シンデレラという名前ですね」
王「ふん……」
シンデレラ「うー……」クルッ
シンデレラ「――はいっ!」ビシッ
三女「キマッてないけど、別に問題ないですわ」パチパチ
次女「シンデレラ。流石は我が妹。その愛くるしさはもはや神の所業!!! 世界そのものを隷属にする日も近いですわね。シンデレラ、世界征服でもするつもりですの?」
シンデレラ「そんな大それたことは夢でも思ったことがありません」
長女「……全く。シンデレラ? 貴方の所為で私が行き遅れたら責任取ってもらいますわよ。いいこと!?」
シンデレラ「は、はぁ……やってみます……。そ、それより!! 恥ずかしいので帰りましょう!!!」
継母「そうね」
王子「――待ってくれ!!」
シンデレラ「え……?」
王子「あの、私と一緒に躍ってもらえませんか?」
シンデレラ「も、申し訳ありません。もう帰りたいので、帰りますっ。本当にすいませんっ、王子様っ」