翌日
長女「おはよう、シンデレラ」
シンデレラ「おはようございます……」
長女「ちょっと!!! 少し陰のある女の子を演出してますの!!! 全く!! シンデレラだから可愛いの一言に尽きることをお忘れにならないでちょうだい!!」
シンデレラ「す、すいません……」
長女「……」
次女「違う方向に落ち込んでしまいましたわね」
三女「オネエサマッ、シネッ」
長女「セリーヌ……!!! この!! 生意気な口ですわぁ!!!!」ギュゥゥ!!!
三女「お姉様ぁ!!! やめてください!!!」
次女「分かりましたわ。私があの靴を取りに行きましょう」
長女「妹のくせに、姉を差し置いてシンデレラのポイント稼ぎとはいい度胸ですわね」
三女「間をとって私が行きますわ」
継母「騒いだところで、シンデレラの靴は戻ってなど――」
シンデレラ「――お母様!! お姉様!! あの!! すぐそこまでお城の兵士さんがたくさんきてます!!!」
王子「この辺りで間違いないのか?」
兵士「はっ。シンデレラという名前で美しい少女というとこの街にしかいないと……」
王子「そうか」
「シンデレラちゃんの家なら、あの三軒先にある家だよ?」
王子「まことか? ありがとうございます。――急ごう」
兵士「御意」
王子「(全く。父上も気が早い。いくら義理の娘に肩揉みをしてもらうのが夢だからといって、僕の知らないところで……)」
長女「――王子様」
王子「貴方は。昨晩、シンデレラとともにいた……」
次女「シンデレラ? 我が家のシンデレラは昨日、一歩も外を出ませんでしたわ」
王子「なに?」
三女「誰かと勘違いされているのではありませんか?」
王子「そんなことは……。そこのヌイグルミを抱えた貴女も昨晩、城で見ている。間違いない」
長女「ともかくおかえりあそばせ。王子様」
兵士「貴様!! 無礼であるぞ!!!」
王子「よい。――では、確認したいことが」
長女「なんでしょう?」
王子「この透明な靴を履いていただきたい」
長女「……!!」
長女「(しまった……。あれは特注品ですから、シンデレラの足にジャストフィットしちゃいますわ!!!)」
王子「それだけでいいのです。お願いします」
次女「少しイケメンだからって、女が言うことを聞くと思ったら大間違いですわ!!!」
三女「ぶっちゃけ、私は少しタイプですけど」
次女「まぁ、嫌ってわけじゃないですわ……」
王子「お願いします。シンデレラに会わせてください」
長女「いやですわ!!!」
継母「――構いませんわ」
長女「お母様!!!」
継母「王子様、度重なるご無礼をお許しください」
王子「いや、無礼なのはこちらも同じことです。知らせもなく王族が現れれば混乱もするでしょう」
継母「シンデレラ」
シンデレラ「は、はい……」モジモジ
長女「ディーフェンス! ディーフェンス!!」
次女「鉄壁の守りですわ!! ネズミ一匹通さないですわ!!」
三女「クマのセリーヌの恐ろしさを知るがいいですわ」
シンデレラ「お姉様……通れませんから……」
長女「でも……いや、別にシンデレラの人生ですから? 好きにしちゃえばいいですわ!! でも、まだ人生の墓場へ駆け込むのはどうかなぁーって……思いまして……ね?」
シンデレラ「王子様……昨晩は大変失礼なことを……」
王子「とんでもない。私たちのほうこそ父……いえ、国王が貴方を拘束しようとしたと聞き……その……気分を害されたのではないかと……」
シンデレラ「いえ……少しびっくりしただけです……」
王子「それはよかった。それにしても、着飾ってないほうが魅力的ですね」
シンデレラ「え……あの……そんなこと……」モジモジ
長女「ディーフェンス! ディーフェンス!!」
次女「何人も侵入を許さない、鋼鉄の壁ですわっ!」
三女「イクラオウジサマデモ、シンデレラニテヲダシタラ、オレノゴウワンガウナルゼッ」