王子「それでは、疑っているわけではありませんが、この靴を履いてください」
シンデレラ「は、はい……」スッ
兵士「おぉ……この方こそ紛れもないシンデレラ様ですね」
王子「そのようだな。では――」
長女「ちょっと――」
シンデレラ「あの!!」
王子「なんですか?」
シンデレラ「わ、私、まだこの街に来て半年しか経ってないんですけど……。皆さん、こんな私に……その……あの……」
王子「……」
シンデレラ「温かく、して、くれて……。す、す……すきなんですっ!! この街のことを!! いえ!! 正確には最近好きになれたんですけど……」
王子「そうですか」
シンデレラ「それになにより……。とても大好きなお母様とお姉様が傍にいてくれるんです!!」
長女「好きって!? 好きって言いました!? 別に嬉しくないですけどぉー? えー? 全然、心に響かないですわー」
次女「ここではっきりさせておきます。私がシンデレラを好きなのではなく、シンデレラが私を好きということですわね」
三女「なによ、シンデレラ。私に一生の思い出をくれるっていうの? ふざけないでくださらない? もうシンデレラのことしか考えれないわ!」
シンデレラ「お母様もお姉様たちも私の料理をいつも褒めてくれて……褒め方は不器用なんですけど……それが……あの、嬉しくて……」
シンデレラ「ここにきてから、料理することが楽しくなって……褒められたらもっとがんばろうって……こっそり練習したりして……」
王子「……」
シンデレラ「がんばれば、その分だけお母様もお姉様も喜んでくれて……」
シンデレラ「わ、わ、私、今が一番幸せなんですっ!!!」
継母「シンデレラ……」
長女「……」
次女「なによ!! シンデレラ!! それ以上言ってみなさい!! もうね!! 大好き!!!」
三女「シンデレラ、セリーヌあげますわ」
シンデレラ「だ、だ、だから、あの……結婚とか考えられません!!! 申し訳ありませんっ!!! 靴を返していただき、ありがとうございますっ!!」
王子「……まいったな。フラれてしまったか。その気はなかったが、こう言われると存外に気持ちが沈むものだ」
シンデレラ「……え?」
王子「勘違いさせたようですね。私は昨晩のお詫びと、この落し物を届けにきただけなんです。僕も結婚はまだまだ考えていませんし、候補を作りたいとも思ってはいません」
シンデレラ「あ……え……?」
王子「まだ見聞が足りないのは自覚しています。人一人の人生を支えることなどできない、若輩者ですから」
シンデレラ「王子様……じゃあ……えっと……」
王子「貴女に惹かれたのは嘘じゃありません。もしも、この場で求婚されたら、さすがに断る自信はありませんよ」
シンデレラ「す、すいません!! わた、わたし!! と、とと、とんでもなく恥ずかしい勘違いを……!!!」
王子「頭をあげてください。私も最初に説明しておくべきでした」
シンデレラ「王子様……」
王子「それでは失礼します」
シンデレラ「は、はい……」
王子「……ですが」
シンデレラ「は、はい?」
王子「もしも、貴女とまた出会う日があるとするなら、それは私がシンデレラを迎えにきた日となるでしょう」
シンデレラ「お、王子様……」
王子「行くぞ!!!」
兵士「はっ!!」
シンデレラ「はぁ……王子様ぁ……」
長女「ちょっと!! シンデレラ!!! なにをデレーッとしてますの!!! あんな男、遊ばれて捨てられるだけですわ!!! 他の女にも同じこと言ってますわよ!!!」