長女「鏡を」パチンッ
シンデレラ「は、はい」タタタッ
シンデレラ「――どうぞ、お姉様」
長女「鏡をごらんなさい」
シンデレラ「は、はい」
長女「鏡よ、この世で一番美しいのは、だぁれ?」
三女「シンデレラッ」
シンデレラ「えぇ!? そんな、そんなこと!! お姉様たちのほうがよっぽど……!!!」
長女「おだまりあそばせ!!!」ビシッ
シンデレラ「ひっ……」ビクッ
長女「貴方が醜いのはその卑屈なところだけですわ!!!」
シンデレラ「申し訳ありません……こ、こればかりは……どうにも……」
長女「そう。その部分だけが醜い。あとはこんなにも可憐、憐憫、端麗なのに。もったいない!! ああ!! もったないないザマス!!!」
シンデレラ「すいません……すいません……」
長女「と、いうわけで、貴方も出るのよ、この舞踏会に」
シンデレラ「あの……それとこれと、どのような関係が……」
長女「貴方の唯一の欠点である、その卑屈さを直してあげますわ」
シンデレラ「いや、でも、私、踊りなんてできませんし、ドレスも……」
次女「踊れないなら、練習すればいいじゃない。ドレスがないなら、買えばいいじゃない。シンデレラのお陰で無駄な出費はかなり抑えられているし、買えるわ」
シンデレラ「そんな……もったいないです……」
三女「セリーヌも出ろって言っているわ」
シンデレラ「そんな……セリーヌさん……」
継母「ふん。では、決まりですわね」
長女「ええ。お母様」
次女「異議なし、ですわ」
三女「私もよろしくてよ」
シンデレラ「あの……人前で……しかも王子様や王様がいる前で踊りたく……」
長女「心配することはないわ、シンデレラ。この姉が見っとも無い姿にだけはさせなくてよ!! おーっほっほっほっほ!!!」
シンデレラ「あぁ……そんなぁ……」
継母「――シンデレラは?」
長女「天使のような寝顔で寝ていましたわ。キスしておきました」
次女「言っておきますが、お姉様。右頬なら私と間接キスですからね」
長女「心配いりませんことよ。私が口付けしたのは右足の裏ですから」キリッ
三女「それはさすがに……」
継母「さて、今回の舞踏会。三人とも私の計画を察してくれたようなので、助かりました」
長女「すぐにわかりましたわ、お母様。少し強引ではありますが、シンデレラに自信をつけさせるにはいい機会だと思います」
次女「あのままではずっと人の顔色を見て生きていく嫌な美少女になってしまいますからね」
三女「シンデレラには幸せになってほしいですからね」
継母「舞踏会は3ヵ月後ですから、準備をするには十分ですわ」
長女「ドレスを新調しませんと……。シンデレラ用のドレスはまだありませんから」
次女「化粧も覚えさせたほうがいいですわね」
三女「ダンスの勉強もさせるべきでしょう」
長女「忙しくなりますわね、おーっほっほっほ」
継母「よしなに」
数日後
長女「さあ、シンデレラ!! この店で気に入ったドレスを選ぶがよろしいザマス!!」
シンデレラ「あの……」
長女「妹に拒否権などありませんわ!」
シンデレラ「はい……」
長女「(悪く思わないでね、シンデレラ。貴方のためなの……)」
シンデレラ「えっと……これ……あ、やっぱり、こっちに……」
長女「お待ちなさい」
シンデレラ「え……」ビクッ
長女「今、値札を見てやめましたわね?」
シンデレラ「さすがに桁が多くて……」
長女「妹がお金の心配なんて10年早い!!!」ビシッ
シンデレラ「す、すいません!!」
長女「好きなのを選ぶがいいわ」
シンデレラ「お姉様……」