次女「カボチャが想像以上に硬くて中身をくり貫けなかったらしいわよ」
三女「まぁ、それはそれは」
継母「お黙りなさい! 他人の失敗をそうやってネチネチと突くのは淑女失格ですことよ!!」
長女「まぁ、でもインパクトはありますわ。巨大カボチャに乗ってくる女性などシンデレラの他にいないでしょうから」
次女「人の視線がシンデレラに集中するわけですわね」
長女「そう。そうなれば人目を気にしすぎるシンデレラにとってもいい薬になるやもしれませんわ」
三女「逆効果な可能性を考えないところがお姉様らしいですわ」
継母「さぁ、シンデレラ!!! 乗るのですよ!!!」
シンデレラ「でも、恥ずかしいです……」
長女「乗りなさい!! 遅刻したいの!?」
シンデレラ「だって、これ……特殊な業者さんみたいですし……」
次女「業者だろうが牛舎だろうが、乗っているのはシンデレラよ? どういう意味か分かるわね?」
シンデレラ「わかりません」
三女「つべこべ言わずに乗れよ、ハゲ。ってセリーヌもカンカンですわ」
シンデレラ「セリーヌさんにそういわれたら……乗るしかないですけど……はぁ……」
街中
シンデレラ「うぅ……」
「なんだあれー」
「あはははー」
「シンデレラちゃんはカボチャの上にいてもかわいいなー」
長女「そこ!! 当然のことを言わないでください!!!」
次女「耳にタコができるぐらい聞いた台詞ですことよ!!!」
シンデレラ「お姉様!! やめてください!!」
長女「姉に指図するとは、偉く可愛くなったものね、シンデレラ?」
シンデレラ「あ、いえ……そんなつもりは……」
三女「ふんっ。お姉様? どうせ、少し綺麗になったから調子に乗っているんですわ」
次女「そうなの? なら、もっと調子に乗りなさい。シンデレラにはそれだけの資格がありますわ」
長女「おーっほっほっほっほ!!! よくってよぉ!! よくってよぉ!!! 調子にのって、よくってよぉ!!!」
継母「この調子で行けば、余裕で間に合いますわね」
シンデレラ「あぁ……帰りたい……」
城内 舞踏会場
「王子様。楽しい一時、ありがとうございました」
王子「いえ。私も楽しいダンスを踊れて嬉しかったです」
「は、はいっ。それでは失礼しますっ」テテテッ
王子「ふぅ……」
王「先ほどの貴婦人はどうだ? 中々の美人だったが」
王子「父上。僕はまだ将来の相手を選ぶなんてことはできません。まだまだ知らないことも多く、人一人を幸せにすることなどできはしません」
王「そういうな。これは候補を決めるためのものでもある。妃といかずとも、側室として選ぶのも……」
王子「父上、ご冗談を」
王「ワシにも側室はおる。お前もそのうち――
「あ、あの、王子様、このわたくしと一緒に踊ってもらえませんか?」
王子「……はいっ。喜んで」
「まぁ、嬉しいですわ!」
王子「行きましょうか」
王子「(なんて不毛な……。どうせ、ここにいる者たちは僕の地位しかみてない……。その中から妃を選ぶなど、無理に決まっている……)」
城門
兵士「お、おい!! とまれ!!」
継母「なんでございましょう?」
兵士「カボチャを注文した覚えはない!!」
継母「何を言っているのやら。シンデレラ、言っておあげなさい。これが何かを」
シンデレラ「……カボチャの馬車ですぅ……すいません……」
兵士「な、なんだ、舞踏会参加者か……お……?」
長女「なんですか?」
兵士「い、いや、どうぞ。もう始まっています」
次女「ふふ、見ましたか、お姉様。あの男の顔」
長女「無理もありません。カボチャの上に絶世の美少女が鎮座していたら、息を呑むと言うものでわ」
三女「ねえ、シンデレラ? どう? 殿方を一目で魅了した気分は?」
シンデレラ「なんとも……いえません……」
三女「これから貴方は男女問わず何万人もの人に言い寄られるのだから、シャンっとなさい。でないと死ぬわよ?」
シンデレラ「死ぬんですか!?」