【※やり直し※】10年前に戻って人生をやり直すことに・・・僕は10年分の巻き戻しを、まったく無意味にしてみた。

ひどい場所だったね。ここからバスに乗ったら、
昭和や大正に連れてかれるんじゃないかと思った。
まあ、本当にそうだとしたら、僕は進んで乗っただろうけどね。

僕がココアを飲み終えると、妹は「ん」と手を差出し、
僕のカップを自分のカップに重ね、捨てに行った。
すたすた歩く妹の背中を、僕は後ろから眺めていた。

一周目の妹と比べると、ずいぶん頼りない感じがしたな。

突然僕は、妹に、ものすごく悪いことをしたような気になった。

妹が家出した十六歳の女の子だってことを、
僕は、きちんと配慮していたと言えるだろうか?
本当は、母親には嘘をつくべきだったんじゃないか?

そもそもこの子は、家出なんてするタイプじゃないんだ。
よっぽどの考えがあって、僕のもとに来たんだろう。

せめて本人が満足するまでの間くらいは、
かくまってやった方が良かったんじゃないか?

妹がバスに乗り込む寸前、「なあ」と僕は言った。
「また家出したくなったら、来るといいよ」

こんな台詞でも、言うのにずいぶん勇気を必要とした。
二周目の僕は、家族に対してさえ臆病なんだよ。

振り返った妹は、めずらしく目を見開いて、
しばらく立ち止まって僕の顔を見て、
「そうする」と言って笑い、バスに乗り込んだ。

バスが行ってしまうと、僕は待合室に戻り、
帰り道に向けて、再びココアで体を温めた。
妹の笑顔を見て、やけにほっとしている自分がいたな。

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