一番言いたくなかったはずの言葉なのにな。
格好と寒さで頭がどうかしてたんだと思うよ。
本当に酷い吹雪でさ、目を開けているのも辛かったし、
無意識に奥歯を噛みしめちゃって、顎が痛くて、
自分がどこまで服を着てるのかも分かんないくらい、
体のあらゆるところが冷え切ってたね。
僕のやり方が正しかったかどうかは分からない。
でも、結局、事故は一件も起こさずに済んだんだ。
何回か僕たちの方が轢かれそうになったけど、
まあ目立つ服装だったからね、何とか生き延びた。
この日ばかりはサンタクロースの格好に感謝したね、
これがジャックランタンとかだったら、間違いなく死んでたよ。
そして、例の青い車が通り過ぎるのを、僕たちは見送った。
かつての僕たちが通り過ぎていくのを見送ったんだ。
最初っから最後まで、彼らはなんにも知らない。
でも、それでいいんだと思うよ。
それどころか、自分が助けられたということに
彼らがまったく気付いていないことが、
僕にとっては、たまらなく痛快だったんだ。