―コンビニ―

女店員「いらっしゃいませ~!」
男「これください」
女店員「108円になります」
男「……」チャリン
女店員「2円のお釣りになります」ピトッ
男「……!」
男(この子……もしかして俺に気がある!?)

男「……というわけなんだよ」
友人「はぁ……」
男「客なんかろくにいない寂れたコンビニなんだけど、あの子俺に気があるに違いない!」
友人「ねーよ」
男「いや、あれは脈あるって!」
友人「あるわけないだろ……たまたまだよ、たまたま。事故みたいなもんだ」
男「そうかなぁ」
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―コンビニ―
女店員「いらっしゃいませ~!」
男「これを……」
女店員「30円のお釣りになります」ニギッ
男「……!」
男(今軽くだけど握った! 俺の手を握ってくれたよな!?)
男「気がある!」
友人「ないって……」
男「あるって! 俺はもうほとんど確信してる!」
友人「ないない……ありえない」
男「だって、手を握ってくれたんだぜ!?」
友人「小銭を落とさないように渡したら、偶然そうなっちゃったんだろ?」
友人「自意識過剰すぎなんだよ……。くれぐれもストーカーになるんじゃねえぞ」
男「うう……」
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―コンビニ―
女店員「お釣りです」チャリン
客「どうも」
男(あの客の手には触ってない……)
男(次は俺だが……)
女店員「40円のお釣りになります」ピトッ
男(うほおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!)

男「間違いない……!」
友人「いや、何度もいうけどたまたまだって」
男「いや、たまたまなんかじゃない! あの子、俺に惚れてる!」
友人「やめとけって、なーんか嫌な予感するんだよ」
男「いいや! 俺はもう99%確信している! あとは残り1%を埋めるだけだ!」
友人「お、おいっ!」
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―コンビニ―
女店員「いらっしゃいませ~!」
男「これを……」
女店員「お釣りです」ピトッ
男(最後のピースがハマった……)
男(確信した……この子は俺に惚れてる! ――100%ッ!)
男(決まったぁぁぁぁぁ! デートに誘ってやるぅぅぅぅぅ!)
ドクンッ…
男「……え?」
男(なんだ、今の感覚……)
女店員「やっと……“惚れて”くれたわね」
男「え?」
ギュゥゥゥゥンッ
男「な、なんだぁ!?」
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男「位置が入れ替わった……!? なんで俺がレジにいるんだ……!?」
女店員「ふふふ……」
男「お前、何しやがっ――」
女店員「おっと! もう喋らない方がいいわ。あなたはもう“店員”なのだから」
女店員「うかつな発言すると、二度と出れなくなっちゃうわよ」
男「どういうことだ!?」
女店員「ルールを説明してあげる。これもルールのうちだからね」
女店員「ルールその1ッ! 『店員となった者は客を100%混じりっ気なしで惚れさせなきゃここから出られない』」
女店員「ほんの少しでも疑念があっちゃダメってことね」
女店員「ルール2ッ! 『言葉で愛を伝えたり、露骨なお色気アピールなど、店員の立場を逸脱した行為はNG』」
女店員「笑顔で挨拶したり、釣り銭渡す時に手を触れるくらいがせいぜいってところね。助けを求めるのもダメ」
女店員「ルール3ッ! 『出られた時は新しい店員にちゃんとルールを説明すること』」
女店員「そしてルール4ッ! 『ルール2や3を破ると永久にここから出られなくなる』」
女店員「ちなみに惚れてる惚れてない判定は商品を売買した時になされるわ」
女店員「だから仮にあなたに惚れた客がいたとしても、何も買わないで帰ったら出ることはできないわ」
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男「なんだって……」
男「じゃあ今まで俺の手を触ってきたのは……」
女店員「そう、あんたを私に惚れさすためだったのよ」
男「他の客に触れなかったのは……」
女店員「ターゲットをあんたに絞ってたからよ。自分だけ特別扱いされてるって思わせるためにね」
女店員「前ここにいたイケメン店員にはめられてここにずっといたけど、あんたのおかげでやっと出れた!」
女店員「そういうわけだから、私は帰るわ」
男「ま、待てよ! 俺はどうすれば……!」
女店員「私がやってたようにやるしかないんじゃない?」
女店員「まあ、コンビニ内は意外と快適だし、商品も勝手に補充されるし、そこは気楽なもんよ」
女店員「じゃあ、頑張ってねー」ウイーン…
男「そ、そんなぁ……」
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男(本当に……出れないのか?)タタタッ
ガンッ
男(出れない!)グッグッ
男(見えない壁があって、レジの外に出れない!)
男(一応事務所みたいなスペースがあって、ここで最低限の生活はできるみたいだけど……)
男(刑務所暮らしだってもっと自由があるぞ!?)
男(あんまりだぁ~~~~~~~~~~!!!)
ウイーン…
女性客「……」
男(あ、客がきた! しかも女!)
女性客「これください」
男「お釣りになります」ピトッ
女性客「なにすんの! 気持ち悪いわね!」バッ
男(やっぱりこうなるか……)
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男(俺はイケメンでもなんでもないし、男の店員に手を触れられて喜ぶ客なんているのか?)
男(もしかして俺、一生ここから出られないんじゃ……!?)
男(とにかく、出られるよう頑張らないと!)
男「いらっしゃいませー!」
男「ありがとうございましたー!」
男「いらっしゃいませー」
男「ありがとうございましたー」
男「いらっしゃいませー……」
…………
……
男(ダメだ……俺に惚れてくれそうな客が一人もいねえ)
男(ただでさえ来る客が少ないのに、まして惚れさせるなんて……)
男(もう一生このままなんだろうなー……きっと……)
男「いらっしゃいませー」
男「ありがとうございましたー」
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ドクンッ…
男「……ん?」
男(今の感覚はあの時味わった――)
ギュゥゥゥゥンッ
男「!?」
男「――あ、あれ!?」
男「俺が客側にいる……!? なんで……なんで入れ替わってんだ!?」
男「!」ハッ
男「お、お前は……!」
友人「久々にお前に会えたと思ったら……どうなってんだこれ?」
男「友人!?」
友人「なんで商品買った俺がレジにいるんだ? 説明してくれないか?」
男(説明するのもルールだっていってたよな……)
男「実は……」
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友人「そういうことか……」
男「ああ、つまりお前は誰かを惚れさせない限り、出られ――」
男(ってちょっと待てよ?)
男(なんで俺は出れたんだ? もしかして、もしかして……)
男「お前、ずっと俺に惚れてたのか!?」
友人「……ああ」
友人「俺はお前が好きだった」
友人「女店員の件も、嫉妬で“たまたまだよ”って言い続けてたんだ」
男「!」
男「バ、バカ! そういう想いを伝える行為は禁止だっていったばかり――」
友人「一生ここを出られなくなるんだろ? いいんだ」
友人「俺の想いを知っちまったら、お前はもう俺のことが気持ち悪くなるだろうし……」
友人「俺はもうずっとここで暮らすよ」
友人「お前は俺のことなんか忘れて、新しい人生を歩んでくれ。元気でな」
男「……」
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男「このガムを買うよ」
友人「? ……ありがとうございます」
ギュゥゥゥゥン
男「……やはりな」
友人「な!? なんでお前までレジ側に!?」
男「レジにいられるのは一人だけ、なんてルールはなかったからな」
男「つまり、俺もお前に100%惚れちまったってことだよ」
友人「……!」
男「お前の健気な気持ちに、俺も心を打たれてしまった。電流が走るってやつだ」
男「俺もお前が好きだ」
友人「バカッ! そんなこといったら出られなく――」
男「いいんだ」
男「お前と二人……永遠にこのコンビニで暮らす。最高の人生じゃないか」
友人「ありがとう……!」
ギュッ…
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それからというもの――
―コンビニ―
男「いらっしゃいませー!」
友人「ありがとうございましたー!」
二人の男が生き生きとレジに並ぶコンビニは、今日もひっそりと営業している……。
―おわり―
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42: 以下、VIPがお送りします 2019/05/03(金) 02:24:03.510
45: 以下、VIPがお送りします 2019/05/03(金) 02:27:55.358
48: 以下、VIPがお送りします 2019/05/03(金) 02:31:34.174
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